"乳がん手術日にゴルフへ行った夫の末路" 第15話
本当に、何でもない夜だった。
夕飯の、優馬が絵本を持って私の膝に乗ってきた。
ページをめくるたびに、さな指が絵のをる。
「ここ、くまさん」
「そうだね」
「こっちも」
「本当だ。こっちにもいるね」
それだけで嬉しくてたまらないという顔をしていた。
全で笑っていた。
その笑顔を見ていると、胸の奥がすっと静かになった。
今まで私は、この子のためにしようとっていた。
父親がいるの方がいいんじゃないか。
別れることで優馬も傷つけるんじゃないか。
私がみ込んで済むなら、その方がいいんじゃないか。
ずっとそう考えていた。
でも、本当にそうなのか。
その答えはもうていた。
優馬はそれでも、父親にづこうとしていた。
絵本を閉じた、さな積みを両で持ってソファーにいる啓介のところへった。
青い積みと赤い積みをねて、さな塔を作っていた。
本にとっては作なのだろう。
目がキラキラしていた。
「パパ、見て」
啓介はスマートフォンを見たまま言った。
「ああ、すごいなあ」
1秒も見ていなかった。
「ここが、おで」
「うん」
画面を指でスクロールしながら、返事をしていた。
優馬はそのにしっていた。
何かを待つみたいに黙ってっていた。
でもそれ以何も返ってこないと分かると、静かに踵を返して戻ってきた。
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「ママに見せる?」
私が声をかけた。
「うん、見せて」
「ここが、おで。ここが」
「すごいね。がきいね」
「うん」
その瞬に見せた笑顔は、さっきの啓介のではなかったものだった。
私はその背を何度見ただろう。
父親のところへって見てもらえなくて、何も言わずに戻ってくるさな背を。
それはしい景だった。
でももっと怖いのは、それが常になっていることだった。
啓介のいるで、優馬が育っていく。
父親が母親の言葉を流す姿。
事なに来ない姿。
自分の都を優先しても誰かが何とかしてくれるとっている姿。
それを毎見て、こういうものなんだと覚えていく。
それが1番怖かった。
私はずっと「この子のためにする」と頑張ってきた。
でも本当は逆だったのかもしれない。
することで、この子に違った「当たり」を見せていたのかもしれない。
父親ってこういうもの。
母親はするもの。
族のことは誰か1が背負えばいいもの。
そんなものを、私は優馬に見せたいわけじゃなかった。
この子のために終わらせる。
もう決めた。
声にはさなかった。
でものではっきり言えた。
その瞬、迷いがなくなった。
婚届のき方はもう調べてあった。
む所の当たりもつけてあった。
弁護士への相談の流れもに入っていた。
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母に預けてある荷物もある。
あとは、くだけだった。
その夜、優馬が寝た、私はダイニングテーブルで帳をいた。
メモしたのはじゃなかった。
術の付、レシートの付、駐券の刻。
優馬が怪をした、「したことなくてよかったじゃん」と言われた夜。
事実は消えない。
忘れようとしても消えてはくれない。
だったら、ちゃんと持っておけばいい。
その夜遅く、啓介が帰ってきた。
「まだ起きてたの?」
「うん」
「飯残ってる?」
「ラップかけてある」
それだけだった。
啓介はキッチンへ向かい、レンジのボタンを押した。
私は帳を閉じて、引きしの奥にしまった。
何も変わらない夜だった。
だからこそ、私のでは全部決まっていた。
そしてその。
今度は啓介が術をすることになった。
「胃のポリープが見つかった」と啓介が言ったのは、夕のだった。
優馬はもう寝へっていた。
居には、私と啓介の2だけが残っていた。
啓介はソファーにく腰かけたまま、そこまで刻そうでもない顔で言った。
「来週、術なんだ」
彼は軽く言う。
「胃のポリープがったよりきいらしくて、1泊2で全麻酔で取るって」
私は向かいの子に座ったまま、黙って聞いていた。
「まあ、悪いもんじゃないらしいんだけど。のためってやつ。先に切った方がいいって言われてさ」
1度言葉を切った。
それから、しだけ線を落として、珍しく声の調子を変えた。
「でもやっぱさ、術ってなるとちょっと怖いじゃん」