"乳がん手術日にゴルフへ行った夫の末路" 第18話
あなたが気づいてくれるのを、あのから待ってた」
私は静かに息を吐いた。
「もう待たない」
啓介のがさく震えていた。
私はそれ以、何も言わなかった。
話すべきことは、もう全部言った。
背を向けて寝へ向かおうとした。
ろで、啓介が慌てたようにスマートフォンを掴む音がした。
「親父」
私は振り返らなかった。
「いや、ちょっと待ってくれ。今、ゆかが……」
声がずっていた。
「婚するとか言いして。あ、いや、急にじゃない。でも……」
そこで言葉が詰まった。
話の向こうで、義父の声が鳴るように響いた。
何を言っているかまでは聞き取れなかった。
が、啓介が何度も「いや、でも今はそれどころじゃなくて」と繰り返していた。
私は寝の扉を閉めた。
もう、あの親子の声を聞く必はなかった。
その夜、私は優馬の寝顔を見ながら、の持ち物をもう1度だけ確認した。
必な類、保険証、通帳、印鑑、相談先のメモ。
忘れるものは何もなかった。
啓介の術当の朝。
私はいつも通りに起きた。
目覚ましが鳴るだった。
カーテンのは、まだし暗かった。
台所でお湯を沸かしながら、今やることをので順番に並べる。
啓介の入院、母と流、午弁護士事務所、その必類の確認、役所での続きの段取り。
やることはもうではなく、順番になっていた。
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啓介はし青い顔で起きてきた。
いつものように寝癖を直す余裕もなくて、数もなかった。
「本当に、来ないんだな」
「かないよ」
それだけ言うと、啓介は黙った。
るより先にの方が混ざっている顔だった。
私は優馬の朝ご飯を準備した。
卵焼きをさく切って、ご飯をよそって、噌汁をます。
優馬は何もらないまま、眠そうな顔で子に座っていた。
「今、保育園?」
「うん。くよ」
この、母が迎えに来ることも優馬はまだらない。
しばらくして、啓介が玄関で靴を履いた。
いつもよりきが遅かった。
でも何も言わなかった。
「じゃあ、ってくる」
私は応、台所から顔だけ向けた。
「気をつけて」
それで終わりだった。
扉が閉まった。
音がざかった。
私はしばらく、そのにったままかなかった。
あの、あれほどく引きずったことが、こんなに静かに区切られていくのが議だった。
しして、母が迎えに来た。
「準備できてる?」
「うん」
母は余計なことを聞かなかった。
封筒のだけを確認して頷いた。
「ゆう、ばぁばとこっか」
優馬のさなが、母のを握った。
その景を見た、私はやっとしだけ息ができた。
午。
私はパートを休んで、弁護士事務所の子に座っていた。
事務所のは静かで、机のの類だけがやけにく見えた。
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弁護士は落ち着いた声で、必な流れを1つずつ説してくれた。
「もうこれで、詰めですね」
弁護士が言う。
「今の連絡は、こちら経由にする形でも問題ありませんか?」
「そうしたいです」
「わかりました。では、その提でめます」
私は頷いた。
に名をく指先は、ったより落ち着いていた。
泣きもしなかった。
ってもいなかった。
ただ自分の名を、自分でいていた。
それだけだった。
事務所をた頃には、空はもう昼を過ぎていた。
「このして実に寄る?」と母が言った。
「1つずつでいいよ」
「うん」
私はそこでようやく、にんでいる実を持てた。
啓介の術のに、私は弁護士事務所にいた。
でもそれは仕返しじゃなかった。
私がやっていたのは、私と優馬の暮らしをて直すための続きだ。
「かない」とあのの言葉を返したことは、確かに区切りだった。
だからもう、振り返る理由などなかった。
そのの夕方。
私は優馬を迎えにって、しい部にいた。
まだ具は最限しかなかった。
カーテンはのから持ってきたもので、丈がしだけりていない。
にはダンボールが3つ。
1つは器、1つは類。
1つは優馬のおもちゃだった。
でも、それで良かった。
窓をけると、らないの音が入ってくる。
くをるの音、どこかのの玄関が閉まる音。
夕方の防災無線のし延びしたメロディ。
ここはもう、啓介のいるではなかった。
母は買ってきた袋をに置いて、を1つずつしていた。