"ドアの黄色の付箋" 第3話
その揺ぶりは、らかに「無断侵入」を自覚しているのものだった。
「体調が悪くて、退してきたんです。……お義母さん、どうしてうちの鍵を? それに、玄関に『留守でした』って貼ってありましたけど……」
私の問い詰めるような線に、義母は数秒フリーズしたあと、急に顔を歪めて胸を押さえた。
「あ、ああ……驚かさないでちょうだい。鍵? 鍵はね、修から万がののためにもらっていたのよ! 理さんが最、鍵を掛け忘れてかけることがあるって修が配して……だから確認しに来てあげたのよ!」
「私が鍵を掛け忘れる……? そんなこと度もありません」
「いいえ! 修が言っていたわよ! それにあの付箋はね、私が来たっていう証拠を残しておかないと、あなたが『お義母さんは何もしてくれない』って文句を言うとったから……!」
苦しい言い訳だった。支滅裂で、に声を荒らげることで誤魔化そうとしている。
「体調が悪いなら休みなさい! 私は親切で来てあげたのに、棒扱いするなんて最ね!」
義母はまくしてるようにそう言うと、バッグをひったくるように持ち、逃げるようにをびしていった。
静まり返った部に、私だけが残された。
悪寒がした。 私は部のを急いで確認した。
現や貴属が盗まれた形跡はない。通帳も、クローゼットの貴品袋も無事だった。
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では、彼女は何をしにここへ入ってきたのか?
よく観察してみると、微妙な「違」があった。
洗面所に置いてある私の基礎化粧品のボトルの向きが、わずかに変わっている。 キッチンにある、私が毎朝んでいる「疲れ目用のビタミンサプリメント」のボトル。蓋の閉まり方が、いつも私が締める角度と微妙にずれていた。
さらに、寝に入った瞬、ツンとする甘ったるい、見覚えのないの匂いがをついた。私はを使わない。
まるで、誰かがこの部の「空気」や「常」を、しずつ塗り替えているかのような気持ち悪さ。
その夜、帰宅した修に、私は事の顛末をすべて話した。
「修、どうしてお義母さんに鍵を渡したの? それに、私が鍵を掛け忘れるなんて嘘までついて……」
修はスーツのネクタイを緩めながら、困ったような、どこか呆れたような笑顔を浮かべた。
「理、落ち着いてくれよ。おふくろが勝に入ったのは悪かったとう。でも鍵は、におふくろが『もし震とかがあったら配だから』って言うから、俺が予備を渡したんだ。言わなかったのは理が気にするとったからさ」
「でも、お義母さんは私が留守だと決めつけて付箋を貼って、チャイムも鳴らさずに——」
「理」
修は私の両を優しく包み込み、私の目をじっと見つめた。その瞳はどこまでも穏やかで、だからこそ底れない恐怖をじさせた。
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「君、最本当に疲れてるよ。仕事のプレッシャーがすごいのかな? おふくろがチャイムを鳴らさなかったなんて、そんなわけないじゃないか。きっと押し忘れたか、理が体調悪くて聞き逃したんだよ」
「私は廊で見てたの! 押してなかった!」
「声がきいよ、理」
修はため息をつき、私のをなでた。
「覚……とまでは言わないけど、今の理はし過敏になりすぎてる。おふくろも悪気があってやってるんじゃないんだから。そんなに責めないでやってくれよ。ね?」
修の完璧な「善」の対応。 私の言っていることを、すべて「疲れによる被害妄」として処理しようとする慣れたつき。
その瞬、私のでたい確信が芽えた。
夫は、義母の方ではない。 夫と義母は、最初からグルなのだ。
次のから、私は「完璧な妻」を演じることにした。
修のでは「昨は取り乱してごめんなさい、私、し疲れていたみたい」と謝罪し、素直な妻を装った。修は満そうに「分かってくれればいいんだよ」と私の肩を抱いた。
だが、私の内面は氷のようにえ切っていた。
週末、修がゴルフにかけている数を利用して、私は葉原の型カメラ専へ向かった。 購入したのは、wifiや波を発しない、内部のSDカードにのみ録画される超型の暗カメラ台。波検器などで探されないための対策だった。
台はリビングのエアコンの吹きしの奥。