"十三足目の黒い靴" 第11話
すでに盤面はひっくり返り、彼が王(チェックメイト)をかけられていることに。
そのの夜、帰宅した宗郎は、私にいつもの粒の丸薬を差しした。
「さあ、美咲。今もこれをんで、ゆっくり休みない。曜はお客様がたくさんいらっしゃるから、体調をえておかないとね」
「ありがとう、宗郎さん」
私は彼の目ので薬をに含み、と緒に喉を鳴らした。 もちろん、舌の裏に隠す技術は、もう熟練の域に達していた。
「いい子だ」
宗郎は私のを優しく撫でた。そのつきは、まるで飼い犬をがる主のようだった。
「曜は、君にとっても僕にとっても、記すべき素らしいになるよ」
「ええ……本当にそうね。私、忘れられないになりそうだわ」
私は無な微笑みを返し、ので静かにナイフを研ぎ澄ませた。
あと。 あなたの「聖としての仮面」が、勢の目ので々に砕け散る瞬まで。
曜の朝、澄み渡ったれのがリビングにり注いでいた。
「美咲、顔は悪くないね。今の着物もよく似っているよ」
宗郎は鏡のにつ私の肩にを置き、満そうに頷いた。私は指示された通り、控えめな淡いの訪問着をに纏っていた。病で、慎ましく、夫に頼りきっている妻——彼が世に見せたい「理の被害者」
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の姿だ。
「ありがとう、宗郎さん。でも……こんなに勢の方がいらっしゃって、私、ちゃんとおもてなしできるかしら。途でが混濁してしまったら……」
「配いらないさ」
宗郎は私のを力く握りしめた。その瞳には、これから始まる「番」に向けた揚がみなぎっていた。
「君は僕の隣で静かに微笑んでいればいい。何かあっても、僕がすべてフォローする。自治会の田さんも、君のお母様も、僕の会社の司も、みんな君の体調のことは理解してくれているからね」
(理解させている、の違いでしょう)
私はのでたく呟きながら、「ええ、頼りにしているわ」と力なく微笑んだ。
午。ピンポーンとインターホンが鳴り、来客が次々と到着し始めた。
「いやあ、桐院先! この度は域模範庭の表彰、おめでとうございます!」
「宗郎くん、美咲さんをいつも支えてくれて本当にありがとうね。美咲、体調はどうだい?」
自治会の田夫妻、私の母、そして宗郎の会社の専務ご夫妻。リビングは瞬くに数の々で埋め尽くされた。宗郎は完璧な笑みを絶やさず、ひとりに丁寧なお茶をし、洗練された会話でを盛りげていく。
「皆さま、本はお集まりいただきありがとうございます。……実は、妻の美咲はここ数、精神にし定な期が続いておりまして」
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卓に豪華な料理が並び、宴が盤に差し掛かった頃、宗郎が静かにちがった。瞬でが静まり返る。
「夜に記憶がないまましてしまうなど、本にとっても辛い症状がております。ですが、僕は夫として、彼女がどんな状態になろうとも、を守り抜く覚悟です。今もこうして皆さまに温かく見守っていただけることが、何よりの救いです」
「まあ……宗郎さん、なんて派な……」 「美咲ちゃんは本当にいい旦さんを持ったわねえ」
参加した親族や役員たちが、の溜め息をつきながら宗郎を称賛する。母などは目元を拭い、「宗郎さん、いつもすみませんねえ」と申し訳なさそうにをげていた。
宗郎はその賞賛を全で受け止めながら、陶酔しきった差しで私を見つめた。
「美咲、怖がらなくていいんだよ。みんな君の方だからね」
彼は胸ポケットから、あの黒いレザーのファイル——『活観察ログ』をそっと覗かせた。 この宴の締めくくりに、彼は「妻の病状の記録」を親族に見せ、成見制度へのスムーズな移と、青の管理権の委任をそので取り付けるつもりなのだ。
すべては彼のい通りにんでいるように見えた。
だが、宗郎が完璧な「聖」の演説を終えようとしたその。
カチャリ。
静まり返ったリビングに、玄関のドアがく音が響いた。
「おや? どなたか遅れて来られたのかな?」
自治会が首を傾げる。宗郎も瞬だけ眉をひそめたが、すぐに微笑みを戻した。