"母の尊厳を踏む家なら捨てます" 第2話
「そんなの、おかしいよ」
「おかしくないわよ。隆司さんは優しいじゃないの。さっきだって、に入って庇ってくれたじゃない」
栞は言葉を失った。 母には、テーブルので隆司が自分の首を締めげたことなど見えていなかったのだ。隆司のあの取りなしが、母の目には「優しいフォロー」に見えていた。
その夜、栞は暮らしのアパートで、えた羊羹をに運んだ。 滑らかな舌触りと、品の良い豆のりが広がった。どれほどのがかかっているか、べればわかるだった。 涙が粒、膝のに落ちた。
翌、曜。 引っ越しを週に控えた居のマンションで、栞と隆司は鍵の引き渡しと部の寸法測りをう予定になっていた。 野駅から徒歩分、築の分譲賃貸マンション。賃は万円。で折半し、初期費用の礼や敷、仲介数料の計万円は、それぞれの座から万ずつしって既に支払いを済ませていた。
栞が部に着くと、エントランスのに見慣れたシルバーの国産セダンが止まっていた。 隆司のではない。敏恵のだった。
胸騒ぎを覚えながらオートロックを抜け、階の302号のドアをけると、リビングから甲い笑い声が聞こえてきた。
「だから言ったでしょう、カーテンは遮の級品じゃなきゃっぽく見えますよって」
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リビングの央に、敏恵がっていた。 メジャーを持った隆司が、その横で頷きながらスマートフォンのメモに何かを打ち込んでいる。
「……お母様? どうしてここに」 栞が声をかけると、敏恵は振り返り、眉をわずかにひそめた。
「どうしてって、息子の居の準備を伝いに来るのは親として当然でしょう。あなた、し遅かったんじゃありません? 気が利かないわね」
「待ちわせはのはずです。今、分ですが」
「あら、目のが来るかもしれないとったら、分に来るのが常識というものよ。これだから、きちんとした庭で育たないお嬢さんは困るわね」
敏恵は何わぬ顔でそう言い放つと、キッチンカウンターの板を指先でなぞった。
「隆司、このキッチンの回り、し古いわね。板を理に張り替えさせなさい。に交渉すれば半額くらいは持つでしょう」
「母さん、ここは賃貸だから勝なリフォームはできないよ」 隆司が苦笑いしながら言う。
「交渉次第よ。相澤の名をせば、産だってしは融通を利かせます。それから栞さん、のことですけれど」 敏恵は鞄から枚のチラシを取りし、リビングのに放るように置いた。 「あなたが選んでいたドラム式洗濯と蔵庫、あれはキャンセルさせましたから」
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部の空気が、ふっとたくなった。
「……キャンセル、ですか?」 栞は自分の声が自然にくなるのをじた。 「あの蔵庫と洗濯は、私の独代の貯からす予定で、昨私が量販で付を払ってきたものですけれど」
「ええ、だからその付は隆司に返の続きにかせました。あんな無駄にきい蔵庫、誰が使うんですの? 暮らしに百リットルなんて贅沢すぎます。それからドラム式なんて気代の無駄よ。縦型のシンプルなもので分。浮いたおはね、別のことに使います」
「別のこと?」
「相澤のの、れの畳の表替えですよ」 敏恵は当然のことのように言い放った。 「来、親戚筋が集まる法があるの。隆司の結婚相としてあなたをお披目する席でもあるのよ。その所にみすぼらしい畳を使って恥をかくわけにはいかないでしょう? あなたがすはずだった代の万円、そちらに回すのが筋というものです」
栞はを疑った。 の独代の貯で、自分が入籍もしていないの、本の畳を張り替える。 あまりの論理の躍に、が追いつかなかった。
「隆司さん」 栞は隣につ婚約者を見つめた。 「あなた、これをってたの? 私の付を、勝に解約しにったの?」
隆司は線を泳がせ、メジャーをカチャカチャと弄んだ。
「いや……母さんが言うことも理あるとってさ。法にはうちの親戚の鎮が集まるんだよ。