"母の尊厳を踏む家なら捨てます" 第3話
そこで栞の印象が良くなれば、々やりやすいだろ? 洗濯なんてが洗えれば何でも同じだしさ」
「私の貯だよ?」
「僕たち、これから夫婦になるんだろ? 族になるんだから、僕のおも栞のおも同じじゃないか。そんな細かいことでカリカリするなよ」
「細かいこと?」 栞の喉から、掠れた声が漏れた。 「私が保育士として、取り万にも満たない料から、毎万ずつかけて貯めたおだよ。それを、どうしてあなたの実の畳に使われなきゃいけないの?」
「栞さん!」 敏恵の声が気に尖った。 「なんて浅ましい物言いをする子かしら! 族になるということはね、内としての務めを果たすということよ。たかだか万円ぽっちのことで、恩着せがましく喚きてて。隆司、この子は本当におに卑しいわね。片親で育つと、どうしてもこういう損得勘定ばかりがにつくのかしら」
「母さん、言い過ぎだって」 隆司が々しく言ったが、その目は栞を責めていた。 「栞、おもし黙れよ。母さんをらせてどうするんだ。謝れよ、く」
まただ。 料亭のときと、全く同じ構図だった。 理尽な求を突きつけられ、侮辱され、そして最に「おが波をてるな」とを塞がれる。
栞はく息を吸い込んだ。 たいコンクリートの匂いが腔を突いた。
「謝りません」
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栞ははっきりと言った。
「なんですって?」 敏恵の眉がつりがった。
「謝りません。の購入は私の個資産からの支として計画していたものです。それを勝に解約したこと自体、納得していません。付の返伝票を返してください。それから、お義母様の実の畳の費用を私が負担する理由はありません。それは相澤ので解決してください」
「隆司!」敏恵が切り声をげた。「この子、何様のつもりなの!?」
「栞、いい加減にしろ!」 隆司が栞の肩を荒々しく掴んだ。 「僕の顔を潰す気か!? たった万だろ! 僕がからしずつ補填してやるって言ったら納得するのか!?」
「から補填するなら、どうして最初からあなたがさないの?」
栞の問いに、隆司はをパクつかせたまま言葉を詰まらせた。 せるはずがなかった。隆司の貯は、独代の見栄を張ったやゴルフ、のローンでほとんど底をついていたのだ。居の初期費用万円をしただけで、彼の普通預残はほぼゼロにいことを、栞は計のシミュレーションをした際にっていた。
「……もういいわ」 敏恵が笑を浮かべ、ハンドバッグを肩にかけた。 「育ちの悪いお嬢さんとは、言葉が通じないようですこと。隆司、きましょう。こんな狭苦しい部、居する所じゃありません」
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敏恵は靴を鳴らして玄関へ向かった。 隆司は苛ちをわにしながら、栞を睨みつけた。
「お、本当に最だな。母さんがどれだけ僕たちのことを配してくれてるか、しは考えたらどうなんだ」
「配?」 栞は乾いた声で返した。 「私の貯を奪うことが、配なの?」
「話にならない」 隆司は吐き捨てるように言い、母親のあとを追って部をてった。
バタン、とい玄関ドアが閉まる音がした。 居の静まり返ったリビングに、栞は残された。
窓のからは、甲州をるの音がく聞こえてくる。 壁には、が並んで具の配置を相談するために貼ったマスキングテープが、虚しく残されていた。
栞はに座り込み、両で顔を覆った。 涙はなかった。ただ、胃のあたりが鉛をみ込んだようにく、たかった。
(結婚って、こういうことなの……?)
母の言葉がをよぎる。 「結婚ってね、そういうの積みねなのよ」
でも、母が耐えてきたと、今自分が突きつけられている理尽は、本当に同じものなのだろうか。 栞はちがり、リビングのに落ちていたチラシを拾いげた。 敏恵が放り投げた、価な縦型洗濯の広告。その裏に、敏恵の跡で乱暴にメモがかれていた。
『初期費用残、栞の定期から引きすこと。印鑑の所を確認』
栞の背筋に、たいものがった。
「……私の定期?」
栞は震えるでスマートフォンを取りし、アパートの自に置いてあるはずの、通帳ケースをい浮かべた。