"母の尊厳を踏む家なら捨てます" 第12話
にした袋を膝のに置く。
「栞さん」 敏恵は値踏みするような線を栞に向け、ゆっくりとをいた。 「式での騒ぎ、隆司から聞きましたよ。担当の方のでクレジットカードを切って見せるなんて、随と派なパフォーマンスをしてくださったそうね。貧しいお育ちの方は、がぶると先を考えずに見栄を張りたがるから困ります」
敏恵は湯呑みにを伸ばし、んでから続けた。 「でもね、私も鬼ではありません。若いお嬢さんが、結婚のプレッシャーで取り乱すことくらい、理解して差しげられます。幸い、式への最終確認は今週の曜まで待ってもらえるよう、隆司に連絡させました。あなたが今、自分の浅はかさを認め、お母様と緒に正式にお詫びに来るなら、この話はに流してあげてもよろしくてよ」
栞は何も答えず、ただ敏恵の顔を見つめた。 敏恵はその沈黙を反省と受け取ったのか、元に微かな歪んだ笑みを浮かべた。
「ただし、条件があります。式に支払った婦側の違約、あれは全額あなたの軽挙妄が原因なのですから、相澤が負担する筋いはありません。それから、先週お話しした畳の費用と、追加の引き物代。それらをわせた百万円を、今週に相澤の座に振り込みなさい。そうすれば、予定通り式を挙げ、相澤の籍に入れてあげます」
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「母さん、それ……」 隣に座る隆司が、恐る恐る声を挟んだ。 「そのくらいでいいよな、栞? 僕からも母さんに頼み込んで、これ以は責めないって約束してもらったんだ。おだって、で婚約破棄されたら職にも居づらいだろ? 定期預からせば済む話じゃないか。な?」
隆司の目は、救いを求めるように泳いでいた。 相澤の面子を守りつつ、自分が背負わされそうになっている式の残額支払いを栞に押し付けたい。その卑しい計算が、透けて見えていた。
客に、壁掛け計の秒針の音だけがカチカチと響く。 父親の康男は、相変わらず週刊誌のページをめくる音すらてず、置物のように固まっている。
栞はく、息を吐いた。
「お話は、それだけでしょうか」
敏恵の眉がつりがった。 「なんですって?」
栞は膝のの袋から、つのさなベルベットの箱を取りした。 座のジュエリーショップで、半、隆司が「相澤の嫁に相応しいものを」と言って見栄を張って分割払いで購入した婚約指輪だった。 箱をけ、央に鎮座するダイヤモンドを度だけ見つめたあと、パチンと音をてて蓋を閉め、敏恵と隆司ののテーブルのに滑らせた。
「婚約指輪をお返しします」
「おい、栞……」隆司の顔から血の気が引いた。
栞は続けて、鞄からみのあるクリアファイルを枚、取りした。
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「枚目は、式から発された正式な清算完証です」 栞はテーブルのに類を置いた。 「私の装、着付け、婦側ゲスト名分のキャンセル料、計百万千円は、先週曜に私の個座から括で決済済みです。これにより、メゾン・ド・フルールに対する私個の銭債務は切残っておりません」
「だから、その勝なキャンセルを――」
敏恵がをきかけたのを、栞は遮った。声を荒らげることもなく、淡々と、しかし遮る余のないさで言葉をねた。
「枚目は、式から郎代表者である相澤隆司さん宛てに発された、残請求です」 栞はもう枚の類を、隆司のに置いた。 「郎側ゲストの料理、引き物の追加分、ランクアップした控のシャンパン、会装、そして郎側の装代。式を止するの規定違約として、相澤隆司さん単独の支払義務額は、百万円です。期は今週の曜。名義は相澤隆司さん個の契約となっておりますので、私には円の支払い義務もありません」
「に、百万……!?」 隆司が鳴のような声をげ、類をひったくった。文字を追う指先が激しく震えている。 「待てよ……婦側がりたから止になったんだぞ! なんで僕がこんなに払わなきゃいけないんだ!? 半分はおのせいだろ!」
「契約をよくお読みください」 栞は徹に告げた。