"母の尊厳を踏む家なら捨てます" 第13話
「追加の発注にサインしたのは、すべて隆司さんご自です。お義母様のご向で勝に増やしたオプションの数々、ご自分ので注文されたのでしょう? 私は事に何度も反対しました。その記録も、私のスマートフォンのメッセージ履歴に残っています」
「栞さん!」 敏恵が座布団からを乗りし、畳をバンと叩いた。 「あなた、何様のつもりなの!? 息子の将来を潰す気ですか! 会社の役員や親戚に、式が止になったなんてどう説するの! 相澤の名にを塗って、ただで済むとってらっしゃるの!?」
「相澤の名にを塗ったのは、お義母様と隆司さんです」
栞は敏恵の目を、正面から見据えた。
「私の母を、披宴会のゴミ箱の脇、配膳の真横の席に座らせようとしたこと。黒留袖を着るなと式に圧力をかけ、平で恥をかかせようとしたこと。居の契約を私の承諾なくき換え、私を保証にして部の権利を奪おうとしたこと。そして、私の留守に部に入り、の届印を盗みしたこと」
敏恵の顔が瞬で赤黒く染まり、元が引きつった。 「ぬ、盗むだなんて、聞きが悪い! 族になるのだから――」
「族ではありません。の財産を無断で持ちす為を、世では窃盗と呼びます」 栞は言い切った。 「産の担当者、式のプランナー、そしての窓。
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すべての方に、相澤側からどのような求がなされたか、事実確認の面を作成していただいています。もしこれ以、私や私の母に対して言われのない銭の求や嫌がらせを続けるのであれば、これらの記録をすべて弁護士に提し、警察への被害届および慰謝料請求の続きを取ります」
敏恵の息が喉で詰まり、ヒュウと掠れた音が漏れた。 常に「世体」を武器にして者を脅してきた女が、自分たちのってきた醜悪な事実をのに晒される恐怖に直面した瞬だった。
「隆司!」 敏恵は突然、隣の息子に向き直り、その腕を狂ったように叩いた。 「どうしてこんな女を選んだのよ! あなたがだらしないから、こんな品なに付け込まれるんじゃないの! なんであんな類にサインしたのよ!」
「母さんがやれって言ったんじゃないか!」 隆司が腕を振り払い、叫び返した。 顔を歪め、を過ぎたが、子供のように母親に声を浴びせる。 「母さんが『取引先に格好がつかないからシャンパンを入れろ』って言ったんだろ! 引き物も『相澤の親戚に恥ずかしいものは配れない』って言ったのは母さんだろ! 僕におがないのってたくせに! どうすんだよこれ! 百万なんて払えるわけないだろ!」
「るものですか! あなたの名義でしょうが! 自分で何とかしなさい!」
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「母さんが払ってくれよ! 僕の貯がないのは母さんの仕てたスーツとかの付にしたからだろ!」
醜い罵りいが、静かな客に響き渡る。 互いに責任を押し付けい、見栄の残骸を擦り付けう。 その景を見ながら、栞の胸のに来したのは、りでも勝利でもなく、ただ寒いほどの虚無だった。
このは、最初から誰もしていなかったのだ。 敏恵は息子をしていたのではなく、自分の虚栄を満たすための付属品として扱っていただけ。 隆司は母を尊敬していたのではなく、その支配にを委ねることで、自分のの責任から逃げていただけ。 そして栞は、そのいびつな共依の穴埋めとして、と労働力を搾取される都のいい贄に選ばれたに過ぎなかった。
栞はゆっくりとちがった。 バッグを持ち、度だけ、部の隅で縮こまっている父親に線を向けた。 康男は相変わらず雑誌を見つめたまま、族の崩壊からを塞いでいた。
「相澤さん」 栞の声に、言い争っていたがピタリとを閉ざし、呆然と栞を見げた。
「私の荷物は、先週の曜にすべて引き払いました。鍵も、産を通じてへ返却済みです」 栞は隆司を見ろした。 すがるように、あるいは怯えるように見げてくるその瞳には、かつて自分が好きになった「穏やかで優しい隆司さん」
の面は微もなかった。