"3年の介護と兄のタワマン頭金" 第6話
「……兄さん、で来るの? 恵理さんと翔太くんは?」
「当たりでしょう。京から幹線でわざわざ族全員で来たら、交通費だけでいくらかかるとってるの。恵理さんは曜も翔太のお受験塾の送り迎えがあるんだって。あの子たちにはあの子たちの活があるんだから、余計な気を使わせるもんじゃないの」
以、私の誕に母が何と言ったかをいす。 『麻子、今夜は残業しないでく帰っておいで。あんたの誕なんだから、所のスーパーで半額の巻き寿司でも買って緒にべましょう』 それだけだった。兄の族には幹線の指定席代往復分を気遣う母が、私の代最の誕には、値引きシールの貼られた惣菜を提案した。
あのから、何も変わっていない。
「お母さん、、実印を押すつもりなの?」
私が訊ねると、母は参の皮をピーラーで剥くをピタリと止めた。包丁の刃がまな板にさくい込む。
「押すわよ。親の私が納得してるんだから、当たりでしょう。健がわざわざ仕事のを縫って、京から類を作って持ってきてくれるのよ。あんたもグチグチ言ってないで、印鑑証取ってきたんでしょうね。役所の張所、駅にあるんだから」
「……取ってないよ」
母のが止まり、ゆっくりとこちらに向き直った。
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その顔には、実の娘を見る目とはえないほどの険悪なが浮かんでいた。
「あんた、まさか本当にを引っ張る気?」
「を引っ張るんじゃないよ。兄さんがどんな類を持ってくるかも見てないのに、実印なんて押せるわけないでしょ。このはお父さんが汗流してローンを払い終えただよ。私たちが育った所だよ。それを売るなら、売ったおがどこへって、お母さんがどこでどう暮らすのか、全部面で確認するのが普通じゃないの」
「健を疑うのか!」
母はピーラーをシンクのに叩きつけた。カシャンと乾いた属音が響く。
「自分の兄を、棒みたいに疑うのかって聞いてるのよ! 健がどれだけ京で苦労して、課までいがったか、あんた何もらないくせに! 親の面倒を見るって言ってくれた息子の顔にを塗るような真似、私が許さないからね!」
母の肩が激しくしていた。に体がかかり、顔が瞬痛みに歪む。それでも母は、その痛みを娘へのりで塗りつぶそうとしていた。
私はそれ以何も言わなかった。言い返せば、母は夜まで鳴り散らし、血圧をげて倒れかねない。
「……お茶、買ってあるから。仏壇の横に置いとくね」
私は自分の部へ戻り、襖を閉めた。
翌の曜。午分。
砂利を踏みしめるいタイヤの音がして、玄関のチャイムが鳴った。
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母は待ちきれない様子で、歩器を乱暴にへ突きしながら玄関へ向かった。私がけるよりもく、母は内鍵をした。
「健! よく来たわねえ。かったでしょう」
「よう、母さん。、丈夫なのかよ。無理して玄関までてこなくていいのに」
玄関にっていたのは、仕ての良さそうなチャコールグレーのジャケットにを包んだ健だった。には名デパートの袋が提げられている。
「丈夫よ、あんたの顔を見たら痛みなんてどっかっちゃったわ。さあ入って。角煮、もう柔らかく煮えてるから」
「悪いね。あ、これ、座の最。恵理が『お義母さんに持っていって』って選んでくれたから」
「まあ! 恵理さん、気が利くわねえ。いつもすまないわねえ」
健が差しした袋を、母はまるで神棚に供える宝物のように両で受け取った。実際には、駅の構内でもどこでも買える名な菓子チェーンの袋だったが、母にとっては「京の息子夫婦からの至の贈り物」に違いなかった。
居に通された健は、畳のにどっかりと胡をかいた。テーブルのに置かれた筑煮と豚の角煮を見て、満そうにを鳴らす。
「やっぱり実の飯は落ち着くな。京じゃこういうの、なかなかえないからさ」
「そうでしょう、そうでしょう。たくさんおべ。麻子、何突っってるの。
健にお茶をしなさい」
台所にっていた私に、母が急きてるように言った。