"十二年前、泥水に捨てられた私" 第10話
には、芸術な性を持つ女の音(ことね)が。
さらにそのには、穏やかで優しい次男の湊(みなと)が。
そして最には、族の太陽のような女の結菜(ゆいな)がまれた。
女の紬を含め、の子供たち。
かつて静まり返っていた邸宅は、子供たちの歓声と音、そして温かな笑い声で満ち溢れるようになった。
圭吾は、血の繋がりがあるかどうかなど度たりとも識させることなく、女の紬を誰よりも慈しみ、誇りい女として育てげた。
奈緒は毎晩、子供たちの寝顔を見守りながら、神への謝を捧げずにはいられなかった。
しかし、この平穏で眩い々の裏で、奈緒を捨てたの歯は、完全に狂い始めていた。
*
の歳は、つの族の暗を、あまりにも残酷に分かち尽くしていた。
かつて隆司と絵里が「待望の跡継ぎ」として持て囃した息子の翔太は、祖母である静子の常軌を逸した甘やかしによって、絵に描いたような暴君へと成していた。
「翔太はの事な跡取りなんだから、っちゃいけません」「何をやっても許される特別な子なんだよ」
そう育てられた翔太は、学学になる頃には同級への暴力を繰り返し、学に入ると喫煙、万引き、恐と非のエスカレートが止まらなくなった。
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警察や学から呼びしを受けるたび、隆司と絵里は疲れ果てた顔でをげ続けた。
「申し訳ありません、庭で厳しく指導しますから……」
だが、に連れて帰れば、静子が「うちのい翔太がそんなことをするはずがない! 全部あの子を嵌めようとした周りが悪いんだ!」と庇いてし、嫁である絵里に矛先を向けた。
「これも全部、あんたの躾がなってないからだよ! 母親のくせに、跡継ぎまともに育てられないで!」
絵里には、もう言い返す気力も残っていなかった。
かつて親友から夫を奪い、豪邸の若女将として勝ち誇っていた頃の面は微もなかった。
だった目元にはい皺が刻まれ、髪は艶を失い、贅沢品を買うもとっくに尽きていた。
の老舗呉『』の経営もまた、代の波に呑まれて急速に傾いていた。
価な量販やインターネット通販の台により、額な着物の需は激減。
先代が残した額の遺産と産は、翔太の度なる示談や、隆司の放漫経営によっていつぶされ、からの追加融資も打ち切られていた。
々の資繰りに追われ、隆司は毎晩のように酒を煽り、酔しては絵里や静子と鳴りうのが常となっていた。
「くそっ……どうしてこんなことになったんだ……! 俺は跡継ぎの男の子をに入れたんだぞ! それだけで、すべてくいくはずだったんじゃないのか……!」
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酒の匂いを撒き散らしながら管を巻く隆司の脳裏に、折、の夜ににいつくばっていた奈緒の姿が浮かぶことがあった。
だが、彼はすぐにその記憶を振り払った。
あんな貧相で、男の子も産めない役たずの女など、捨てて正解だったはずだ。
今の苦境は、すべて景気のせいだ。絵里の教育が悪かったせいだ――そうやって、自分自を欺き続けるしかなかった。
そんな破滅寸のに、通の招待状が届いた。
取引のある繊維問の伝を通じてい込んできた、神崎ホールディングスの『薬発記・謝パーティー』の案内状だった。
『神崎ホールディングス』の名を見た瞬、隆司は溺れる者が藁を掴むようないで目を血らせた。
「絵里、準備しろ! 来週、このパーティーにくぞ!」
「えっ……でも、私たちなんかがっても……」
「馬鹿野郎! 神崎グループといえば、今や国プロジェクトをもかす超巨企業だ! 会に直接取り入って、うちの伝統芸の帯を記品として採用してもらうとか、何かしらのパイプができれば、は発で息を吹き返すんだよ! これは俺たちのを賭けた最のチャンスなんだ!」
こうして、崩壊寸のは、汚れたプライドと浅ましい欲望だけを抱えて、あの豪奢なパーティー会へとを踏み入れたのだった。
*
そして、運命の針はなりった。