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"十二年前、泥水に捨てられた私" 第14話

圭吾が静かに図をすと、警備員たちが隆司の体を抱えげ、ゴミ袋を引きずるようにしてラウンジのへと連れしていった。

扉が々しく閉ざされ、再び静寂が戻る。

奈緒はそっと息を吐き、子供たちの肩を優しく抱き寄せた。

「みんな、ありがとう」

「母さんを守るのは、僕たちの役目だからね」

陸が照れくさそうに笑い、紬が奈緒のに自分のねた。

そこには、誰にも壊すことのできない、本物の族の絆だけがしていた。

あのパーティーの夜から数ヶ

の破滅は、坂を転がり落ちるようにして完した。

での息子の暴と、ラウンジでの醜態は、狭い業界ネットワークを通じて瞬くに広まり、の信用は完全に失墜した。

な取引先は次々と契約を解除し、切の猶予を与えずに担保産の差し押さえを実した。

続いた老舗呉』の板は、あっけなく取りされた。

敷ももすべて失った隆司は、完全にきる気力を失い、アパートので朝から晩まで酒を煽るだけの廃となった。

折、濁った目で空を眺めては、「奈緒……紬……」とうわ言のように呟くだけの、ける屍と化していた。

絵里の迎えた結末もまた、獄そのものだった。

だった「名の若女将」という肩を失い、残されたのは、ますます凶暴化して警察の厄介になり続ける息子の翔太と、認症の兆候を見せながら毎絵里を罵り続ける元姑の静子、そして数千万円に及ぶ連帯保証の借だけだった。

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「どうして……どうして私ばっかりこんな目に遭うのよ……!」

暗い台所で、絵里が吐きす嘆きに答える者は誰もいなかった。

かつて親友を裏切り、の幸せを奪した代償は、彼女の残りののすべてを費やしても払い切れないほど、あまりにもくついたのだった。

の柔らかな陽り注ぐ午

奈緒はらせていた。

向かった先は、かつて紬ときりで暮らしていた、あの畳半のアパートがあった所だった。

古いアパートは疾の昔に取り壊され、そこには真しいコインパーキングが広がっていた。

を止め、アスファルトの敷を静かに見つめる。

ここで、何度たい夜に震えながら紬を抱きしめただろう。

ここで、何度の見えない暗に押し潰されそうになりながら、涙を呑み込んだだろう。

だが、あの絶望の々があったからこそ、自分は歩を踏みさをに入れることができた。

の痛みに寄り添い、真実のを見分ける目を養うことができたのだ。

「……ありがとう、あの頃の私」

奈緒はで、まみれになりながら戦い抜いた、かつての自分に語りかけた。

「辛かったよね。怖かったよね。でも、あなたが諦めずにを向いてくれたから……今の私が、ここにいるよ」

胸の奥にあった最のわだかまりが、初に溶けて消えていくのをじた。

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奈緒は礼し、度と振り返ることなくを発させた。

バックミラーに映るパーキングの景が、ぐんぐんさくなっていく。

それは、彼女が惨めな過と完全に決別した瞬だった。

邸宅に戻ると、広いリビングから子供たちの賑やかな笑い声が聞こえてきた。

玄関のドアをけると、番に末っ子の結菜が駆け寄ってくる。

「ママ、おかえりなさい!」

「ただいま、結菜」

ぎゅっと抱きしめると、柔らかな髪から向の匂いがした。

リビングでは、圭吾が息子の陸や湊とボードゲームを囲んで真剣勝負を繰り広げ、ピアノの部からは音が奏でる美しいショパンの調べが流れている。

キッチンでは、になった紬が、夕のサラダを際よく盛り付けていた。

「お母様、おかえりなさい。今はお父様がく帰ってきてくださったのよ」

「そう、よかったわね」

奈緒はエプロンを締め、族の輪のへと歩みをめた。

のない常。

誰かを蹴落とすことも、柄を誇ることもない、ただ互いを慈しみい、尊う温もり。

それこそが、奈緒が命がけでに入れた、何物にも代えがたい真実の宝物だった。

それからさらに数の歳が流れた。

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