"年収400万円の総務担当と6000万円の顧問契約" 第13話
もしこの3社のクライアントを失えば、今の売は3割も減する。彼は今藁にもすがりたい境のはずです」
私はややかに言った。
「藁がどれだけ頼りないものだったとしてもね。井は救世主じゃないわ」
彼女は尋ねた。
「では、彼は何をしに来るんですか?」
私は断言した。
「渡辺カイトの駒よ。渡辺は鈴社の自分に対する信頼が揺らいでいることに気づいている。だから社内に自分の息のかかったをもっと送り込む必がある」
私は状況を分析した。
「井が入社すれば、オペレーション部は完全に渡辺の支配に置かれることになる」
林さんは息をんだ。
「エミさん、どうしてそこまでのを読めるんですか?」
私は静かに答えた。
「12よ」
その夜、私はずっと誰にも見せたことのないファイルをいた。
暗号化されたそのフォルダーのには、私が商事で過ごした12に蓄積した全ての核なデータが眠っている。
全取引先との契約の報と背景調査の記録。
全クライアントごとの特殊な望を記録した備忘録。
過に発した全てのプロジェクトトラブルの原因分析とその処理フロー。
そしてもう1つ。
私が誰にもそのすら話したことのない文。
『商事内部管理問題リスト』
その数、312項目。
制度の抜け穴から、事なリスク、業務フローの欠陥、コンプライアンス違反の能性まで。
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12、私は問題に気づくたび、誰に言われるでもなくただ記録し続けてきた。
誰も私に見を求めなかったし、私もまた自らそれを提示することはなかった。
なぜなら、私はただの総務担当だったから。
総務担当の見に、誰がを傾けるだろうか。
だが今、私はその312項目のリストを見つめながらふとった。
もしかしたら、このリストを誰かに見せるが来たのかもしれない、と。
その、スマホが鳴った。
らない番号だった。
私は通話ボタンを押した。
「佐藤エミさんでいらっしゃいますか?」
落ち着いた男性の声だった。
「どちら様でしょうか?」
彼は名乗った。
「藤原啓介と申します。商事の社取締役をしております。あなたとお話ししたいことがある」
藤原啓介と名乗る男性と会ったのは、都にある静かな個の料亭だった。
彼は60代半ばだろうか。
いの装にを包み、その話し方はゆっくりとしていたが、言言にみがあった。
彼は私を見ると、丁寧にをげた。
「佐藤さん、まず自己紹介をさせてください。私は商事の社取締役であり、鈴社がこの会社をちげたの最初の投資でもあります」
私は静かに席に着いた。
「藤原さん、私にどのようなご用件でしょうか?」
彼は真っ直ぐに私を見た。
「2つあります。1つ目、アークスが商事に提したオペレーション改善プラン、拝見しました。
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あれがあなたのによるものだということも承しています」
私は軽く頷いた。
「はい」
彼は称賛した。
「素らしい。実に素らしい。私がこれまで見てきたいくつかの企業のシステムよりも、よほどにがついている」
私は淡々と答えた。
「ありがとうございます。そして、2つ目は?」
彼は湯呑みを置いた。
「渡辺カイトという男について、あなたはどのくらいごですか?」
私は彼の目を見つめ返した。
「単刀直入にお願いします」
彼は声を潜めた。
「渡辺が商事に来る、私は彼の辺調査をいました。彼が職を辞めた理由は、表向きはより良いキャリアを求めてとなっていますが、その裏では……」
彼はそこで1度言葉を切った。
「購買部におけるリベート問題を巡る内部調査に巻き込まれていたのです。証拠分で追及はされませんでしたが、彼は事実の勧告退職をさせられた」
私のは、テーブルので微かに張った。
私は尋ねた。
「そのこと、鈴社はごなのですか?」
彼は首を振った。
「いや、らない。ヘッドハンターからの紹介ということもあり、当の鈴社は焦っていた。く調査するに彼を採用してしまった。私がこの報を掴んだのは、そののことです」
私は疑問をにした。
「ではなぜ社にお伝えにならなかったのですか?」