"港に妻を捨てた次期社長候補の末路" 第3話
夫からの追加の連絡は切ない。
きっと今頃、義母ので私の扱いにくさを品な言葉で説しているのだろう。
私は待のガラス越しに、さっきまで乗っていた巨なを見げた。
巨な体は、静かにに浮かんでいる。
あれだけくのを運んでおきながら、私がここに置きりにされたことなど、何もらないという顔をしていた。
私はスーツケースのキャスターをく引いた。
カラカラと乾いた音が響く。
その音を聞きながら、私は初めてはっきりと自覚した。
もう、彼に迎えに来てもらう必はない。
駅の改札に向かう途で、スマートフォンのバイブレーションが鳴った。
夫からではなかった。
画面には、義母の貴子さんの名が表示されていた。
メッセージをく。
『美緒さん、玲から聞きました』
私は歩みを止め、画面の文字を追った。
『し気持ちがぶってしまったのね。今は無理に来なくていいわ』
次のに、彼女の本当の図がかれていた。
『ただ、夫婦のことをに持ちすのは品がありません。わかるわね』
文字だけなのに、貴子さんのややかな声が元で聞こえる気がした。
『なら、み込むことも覚えないとね』
それは、私が結婚してから何度も何度も言われ続けてきた言葉だった。
結婚式の準備で私の母の着物にをされたもそうだった。
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末に森崎の台所で、私だけが片付けを任されたもそうだった。
夫が結婚記を忘れていたことを、「忙しいだから」と笑って済まされたも。
私はずっと、その言葉をみ込んできた。
私は返信画面を閉じた。
代わりに、カメラアプリを起し、港の景を枚撮った。
と、そして岸壁に落ちた自分自のが、はっきりと映っていた。
その写真をフォルダに保し、スマートフォンをバッグの奥にしまった。
横浜へ向かうは、ひどく混雑していた。
私はスーツケースを元に引き寄せた。
キャスターが誰かの靴に触れそうになり、慌ててに引く。
向かいの席に座っているが、ポテトチップスの空き袋をさく折りたたんでいた。
隣の席の会社員は、目を閉じたままの揺れにわせて首を揺らしている。
常は、私の事など切らずに、ただ淡々とんでいく。
駅のホームにりった、夫から話がかかってきた。
私は画面を見つめたまま、なかった。
度目の着信も、無した。
度目の着信が切れ、留守番話の通が残った。
その音声を再したのは、幹線の座席にく座ってからだった。
『美緒、今どこにいる?』
スピーカーから聞こえる夫の声は、いつも通りだった。
『母が配している。迎えにくから、余計なことは誰にも言うな』
鳴ってなどいない。
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『君もなんだから、分かるだろ』
私はスマートフォンの画面を暗くした。
母が配している。余計なことは誰にも言うな。君もなんだから。
私は窓のに顔を向けた。
いビルが次々とろへ流れ、しずつ見慣れない宅が増えていく。
やがて界の空が広くなり、らないの根がざかっていった。
夫の声は、乱れてもいなければ焦ってもいなかった。
むしろ丁寧で、ひどく疲れていて、どこか被害者のような響きすらあった。
だからこそ、私はもうあのマンションには戻れないと確信した。
駅弁を売りに来たワゴンの音が、通の奥からしずつづいてきた。
私は自分が昼をまだべていないことをいした。
ワゴンを呼び止め、さなサンドイッチをつ買った。
透な包みをけると、卵の匂いがふわりと漂った。
夫は、コンビニの卵サンドイッチのに妙に詳しいだった。
「ここのはマヨネーズがすぎる」
彼はよく、パッケージを見ながらそんな評論をしていた。
「あそこのはパンがし乾いている」
そんなくだらない彼の好みをいしてしまう自分が、しだけけなかった。
サンドイッチをみ込んでいると、スマートフォンがまた震えた。
今度は、私の母からだった。
『今どこ?』
画面にはい文章が並んでいる。
『貴子さんから話があったけど、あなたで倒れたの?』