"港に妻を捨てた次期社長候補の末路" 第5話
枕元のスマートフォンは、夜のに何度も震え続けた。
画面を確認すると、夫から件、義母から件、らない番号から件の着信履歴があった。
最に届いた夫からのメッセージには、こうかれていた。
『の午、マンションに戻ってこい。話はそれからだ』
それは命令ではない形をした、確かな命令だった。
私は何も返信せず、画面を伏せて目を閉じた。
翌朝、台所にくと、母は焼き鮭と納豆を朝にしてくれた。
リビングのテレビでは、朝の報番組が芸能の結婚ニュースをるいトーンで伝えている。
誰かの幸せは、こうして無関係なの毎朝のBGMとして消費されるのだと、私はぼんやりとった。
母が私にお茶を注ぎながら聞いた。
「仕事は?」
私は箸を止めた。
「広報部には、今休むって連絡する」
母は配そうに私を見た。
「森崎の会社でしょう」
私はさく頷いた。
「うん」
「きづらいわね、かなり」
母は納豆を鉢で混ぜながら、眉にシワを寄せた。
「辞めちゃえばって言いたいけど、言わないの?」
私はし議にって聞き返した。
「言ったら、あなたがでも辞めなくなるでしょう」
母の言う通りだった。
私はしだけ声をして笑った。
笑うと、胸の奥がぎしぎしと軋むような気がした。
朝、会社の広報部に話を入れた。
先輩の島ナナさんがすぐに話にた。
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ナナさんはいつも昼休みにコンビニスイーツの作を確認し、商品に対してだけは役員よりも厳しい評価をすだった。
「はい、広報部です」
「ナナさん、おはようございます。倉田です」
私は無識に旧姓を名乗った。
「あ、倉田さんじゃなくて、森崎さん。丈夫?」
結婚も々旧姓で呼びかけては慌てて直す、ナナさんのその雑な癖が今はとてもありがたかった。
「すみません。体調が悪くて」
ナナさんは話の向こうで声を潜めた。
「それ、玲さんからも聞いたけど」
私の臓がさくねた。
「夫から?」
「朝、役員フロアでね」
ナナさんは周囲を気にするようにさらに声を落とした。
「奥様が旅先でし定になられてって。いや、私が聞いたんじゃないのよ」
私は壁のカレンダーを見つめた。
「エレベーターで聞こえちゃったの。ここだけの話って、体ここだけじゃ終わらないのよ」
ナナさんは冗談めかして言ったが、その声の奥にはらかな配のがあった。
定。
夫ので、私はもうそういう扱いになっているらしい。
「ナナさん」
私はつ咳払いをした。
「うん」
「私は倒れていません。騒いでもいません」
話の向こうが、瞬だけ静まり返った。
ナナさんは真剣な声に戻った。
「分かった。今は休みで処理しておく。変なことが広がりそうならまた連絡する」
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「ありがとうございます」
話を切った、私はしばらく台所の壁を見つめていた。
そこには、母が貼ったスーパーの特売カレンダーがぶらがっている。
曜はポイント倍。
夫がかしている巨な会社の世界とは違うけれど、確実に活を支えているさな数字だった。
夫は私を港に置きりにした。
それだけなら、ただのひどい夫婦喧嘩で済ませるもいるだろう。
けれど、彼はすでに社し、私の話を自分に都よく作り替え始めている。
その事実を突きつけられた瞬、私の胸のでたく静かな針がき始めた。
昼過ぎ、スマートフォンにメッセージが届いた。
送り主は、瀬だった。
『美緒さん、今朝の予約変更の件見ました。し気になる点があります。話せますか?』
瀬は、私が結婚に勤めていた旅代理の元同僚だった。
父親のさなを継ぎ、今は実くの商の端で旅相談を受けている。
今回のクルーズの配自体は義母の秘経由だったが、私は旅、帰りの交通段を確実にしたくて瀬に度だけ問いわせをしていた。
気になる点。
その画面の文字を見た瞬、私の指先がすっとたくなった。
私は母に「してくる」とだけ伝え、いコートを羽織った。
にると、商は午のいのに包まれていた。
百のには根がのように積まれ、隣の肉からは揚げ物の匂いが流れてくる。
学がランドセルを揺らしてりり、クリーニングのではさな犬が飼い主を待っている。