"港に妻を捨てた次期社長候補の末路" 第9話
森崎のに嫁いだ以、の顔を守る責任があります」
の顔。
私は港のたいコンクリートに置かれた自分のスーツケースをいした。
「私の顔は、誰が守ってくれるんですか?」
貴子さんは初めて、はっきりと眉をひそめた。
「そういう幼い言い方はおやめなさい」
幼い。
定、、幼い。
言葉が次々と列に並んでいく。
どれもすべて、私をさく価値のないものにするための言葉だった。
「帰りません」
私は静かに、しかしはっきりと言った。
「なくとも、玲さんから港で何があったのか。私と同じ所にって説があるまでは」
「同じ所?」
「置いてった側ではなく、置いてかれた側にって、です」
貴子さんは唇をきつく閉じた。
テーブルのには、めかけた茶のりだけが残った。
ラウンジの会計を済ませてをる、貴子さんは私の背に向かって言った。
「美緒さん、を張ると戻る所を失いますよ」
私はゆっくりと振り返った。
「戻る所は、つじゃありません」
その言葉は瀬の受け売りだった。
けれど、にした瞬、しだけ自分自の言葉になった気がした。
翌から、夫の反撃が静かに、しかし確実に始まった。
彼は直接私を鳴るのではなく、常に周囲を使う。
夫はそういう計算ができるだった。
まず、マンションの管理会社から私の携帯に話があった。
広告
私の入館カードが止されているという事務な連絡だった。
名義である夫の確認が必だと説されたらしい。
「私の荷物があります」
「申し訳ございません。森崎様ご本の確認がないと」
森崎様。
話でその苗字を聞くたびに、私自のがくなっていく気がした。
次に、広報部から呼びされた。
部は根っからの悪いではないけれど、夫のと会社のでうまくきてきたらしく、言葉の角をすべて丸めて話す。
「森崎さん、しお休みを取る選択肢もありますよ」
私は席に座ったまま聞いた。
「業務に支障がていますか?」
部は困ったようにを振った。
「そういうことではなくてね。ご庭のことで、気持ちが落ち着かない期でしょう」
私は部の目を見た。
「夫から何か言われましたか?」
部は鏡をし、ハンカチで丁寧に拭いた。
「常務から直接というより、の方で配慮が必だと」
配慮。
私を仕事からざけることも、彼らにとっては配慮という美しい言葉になる。
自分のデスクに戻ると、ナナさんが机のからさな袋をそっと差しした。
「作の抹茶フィナンシェ。これ、正直微妙」
私は袋を受け取った。
「微妙なのをくれるんですか?」
ナナさんは真顔で答えた。
「微妙なものはで抱えない主義なの」
私はわず声をして笑ってしまった。
広告
笑った、また急に涙がそうになった。
ナナさんは子を引き寄せ、声をくした。
「会社の空気、変だよ。あなたを休ませたいというより、パーティーまで表にしたくないじ」
私はフィナンシェの袋を見つめた。
「ご令が定では困るから」
「その言い方、腹つわね」
ナナさんは自分の分のフィナンシェの袋をけながら、眉を寄せた。
「ここだけの話、玲さんも焦ってる。昨秘でさんの名がた瞬、コーヒーこぼしたらしい」
さや。
その名がまたた。
「さんって、社内のじゃないんですよね」
ナナさんは頷いた。
「部のPRコンサル。美で仕事はできる。できるんだけど、距がいって噂はからあった」
ナナさんはフィナンシェをべて、顔をしかめた。
「やっぱり微妙。抹茶が迷子」
そのどうでもいいレポのに、ひどく救われる自分がいた。
その夜、私は母のの階で、瀬からもらった封筒ののをもう度広げた。
『の両配』
『変更刻』
『備考:同乗者あり』
それだけでは、何も決定な証拠にはならない。
けれど、夫の「君が静じゃなかったから距を置いた」という説とはらかに矛盾している。
スマートフォンには、夫からのメッセージが届いていた。
『マンションのカードの件は全のため。戻るなら解除する』
戻るなら。
彼はまた、私に条件をつける。
私は返信しなかった。