"港に妻を捨てた次期社長候補の末路" 第15話
司会者が台本を持ったまま固まった。
私は声を荒らげず、静かに言った。
「私は先、結婚周の旅から戻る港で、夫と別になりました」
ざわめきが、波のように広がった。
「そのことについて、私がだった、体調を崩した、のお客様とトラブルになったという説が部であったようです」
私は夫を見た。
「そのような事実はありません」
く言い切った。
それだけで分だった。
夫が慌てて壇にがってきた。
「美緒、やめろ」
マイクがそのい声を拾い、会に響いた。
私は夫から目を逸らさなかった。
「やめるのは、私の話を勝に作ることです」
夫の顔が醜く歪んだ。
「これは夫婦の問題だ」
「会社で話を変えた点で、あなたがここに持ち込みました」
さやが、を向いた。
貴子さんは子の肘掛けをく握りしめている。
私はバッグから、枚のをした。
瀬にもらった変更履歴のではない。
メールで届いた両配の仮押さえ記録でもない。
それをそのまま見せれば、私を助けてくれた差が危うくなる。
私がしたのは、港で撮った自分の写真を印刷したものだった。
「この写真は、私が港で撮ったものです。夫が乗ったが映っています」
私はその写真を、会に向けずに自分の胸元に持った。
「誰かを責めるためではなく、私がそのにで残されたことを、自分で忘れないために持ってきました」
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夫は写真を見ようともしなかった。
「そんなものに何のがある」
「あなたが振り返らなかった理由が、し分かった気がします。美緒、のを見られたくなかったんですね」
会のざわめきが、隠しきれないほどきくなった。
さやが顔をげた。
私と目がった。
彼女は逃げなかった。
そして、ゆっくりとちがった。
「森崎常務」
その声は会の端までは届かなかったかもしれないが、くのには分に聞こえた。
「もうやめてください」
夫が勢いよく振り返った。
「さん、座って」
「奥様は、何も違ったことをおっしゃっていません」
空気が完全に変わった。
さやのは震えていたけれど、声はったよりはっきりとしていた。
「私は、クルーズに同しました。森崎常務から、次期ブランド企画の察だと説されていました。奥様も承済みで、内では別が基本だと聞かされていました」
私は目を閉じた。
承済み。
また私のいないところで、私が都よく使われていた。
夫はい声で彼女を制止しようとした。
「さや、今それを言うじゃない」
名で呼んだ。
会の何かが、その響きに反応した。
さんではなく、さや。
彼女の顔が張った。
分、自分でもその距のさを、こんな形で見せたくはなかったのだろう。
「を選び続けた結果が、今です」
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さやはそう言い切った。
「玲」
貴子さんがちがった。
その声は、母の声ではなく、徹な会の声だった。
夫は周囲を見回した。
助けてくれる方を探している顔だった。
だがそこにいたのは、彼の見事な挨拶に拍したたちではなく、彼の言葉が崩れる音をはっきりと聞いてしまったたちだった。
「違う」
夫は笑った。
完全に崩れるに、笑って誤魔化す。いつもの癖だ。
「みんな誤解している。これは仕事で、彼女も……美緒、しになっているだけだ」
「私もですか?」
さやがたく聞いた。
「いや、そういうじゃ」
「そういうじゃない」
私が静かに、彼の癖を繰り返した。
夫の顔が真っ赤になった。
「君たちは、何が望みなんだ?俺に恥をかかせたいのか?」
その言で、私にはすべてが見えた。
私を失うことではない。
さやを傷つけたことでもない。
夫が番恐れていたのは、ただ自分が恥をかくことだったのだ。
会の隅で、ナナさんが目を伏せた。
広報部は額にを当ててを仰いでいる。
貴子さんは子に座り直し、彫像のようにかなくなった。
私はマイクからしれた。
「玲さん」
名に、もう夫への甘さは欠片も残っていなかった。
「私はあなたに恥をかかせたいわけではありません。私が置きりにされたことを、私のせいにしないで欲しかっただけです」
夫は何か言い返そうとした。