"十年介護と九千万円" 第13話
そして、その男をこの公団へ送り込み、妹のあなたに介護を押し付けた」
「……迫は、なぜそんなことを」
「と、保ですよ」 神保は酷に言い放った。 「迫は当、警友会の基や殉職者救済ファンドから、億単位のを横領していた。森田は逃資欲しさに、迫のそのみを握っていたんだ。森田が逮捕されてを割れば、迫も刑務所きだ。だから迫は、んだ健の戸籍を森田に与えて匿い、毎る額の傷病当と障害を分けにした。そして何より——」
神保の鋭い目が、私の目を射抜いた。
「実の妹であるあなたが、毎甲斐甲斐しく病しているという『かぬ事実』があれば、部のは誰もその男が偽者だとは疑わない。あなたは、奴らの完全犯罪を完成させるための、きた防壁として利用されてきたんだ」
指先が震え、私は提げバッグを抱きしめた。 では分かっていた。 だが、第者の、それも元刑事のから事実を突きつけられると、あまりのおぞましさに吐き気が止まらなかった。
「神保さん……私は、どうすればいいんですか。あいつらは、曜に茨のを奪い、曜には私を……全に見せかけて殺す気です」
私はバッグから、あの聞に包んだ麦茶の容器を取りし、神保のに差しした。
「これに、何か入っています。
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毎、私にませていた麦茶です」
神保の表が変した。 彼は袋をはめたで容器を受け取り、キャップをけて匂いを嗅いだ。 そして、コートの内ポケットからさなプラスチックの試験のようなものを取りすと、麦茶を滴垂らした。
数秒、試験の端が、気な青に変した。
「……ジギタリス系か、濃度の圧剤だ」 神保の顎の筋肉がりで直した。 「微量ずつ期摂取させれば、血液検査でもただの持病の悪化による致性脈としか診断されない。監察医が迫の息のかかった奴なら、解剖もなしで即荼毘に付される。……枝さん、あんた、本当によく今まできていたな」
神保の言葉に、私の界が涙で滲んだ。 きているのではない。 かされていただけだ。 豚のように太らせ、最の滴まで搾り取るために。
「神保さん、証拠なら、あの部にあります」 私は涙をの甲で乱暴に拭い、神保を見据えた。 「男が隠していたガラケー、配写真、それから……警察から奪った拳銃の部品が、ベランダの排気に隠してあります」
「拳銃だと!?」 神保の目が丸く見かれた。 「削られたニューナンブか……! それがあれば、森田宏本であるかぬ物証拠になる! だが、今すぐ踏み込むわけにはいかん。迫の息のかかった所轄がけば、証拠ごと握り潰される。
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確実に仕留めるには、県警本部の監察官と捜査課の特命班を直接かす必がある」
「は、ありません」
「ああ、分かっている。曜の午……信の保管箱だな」 神保は懐から古い帳を取りし、ペンをらせた。 「枝さん。今夜、もうつだけ、あの部で確認してほしいものがある」
「何ですか?」
「迫が森田を完全にコントロールしている『首輪』だ。迫ほどの男が、ただの脅迫で逃犯とを組むはずがない。必ず、森田の柄とを押さえるための『担保』を、あの部に仕掛けているはずだ。例えば……命保険だ」
命保険。 その言葉を聞いた瞬、私の背筋にたい刃を押し当てられたような悪寒がった。
「森田に何かあったのため、あるいは、あんたに何かあったのためのな。探してくれ。それがあれば、迫の殺害が完全に証できる」
「……わかりました」
「無理はするな。危なくなったら、すぐにこの番号を鳴らせ」 神保は帳の切れ端に携帯番号を殴りきし、私に握らせた。 そのは、え切っていたが、確かな力さがあった。
*
部に戻ったのは午だった。
玄関をけると、男は相変わらずベッドので寝返りを打ち、「う……あ……」と々しい呻き声をげていた。 私は何も言わず、台所で湯を沸かし、しい麦茶を男の湯呑みに注いだ。
もちろん、毒の入っていない麦茶だ。 男はそれを、私の顔を伺うように目遣いで見つめながら、喉を鳴らしてみ干した。