"十年介護と九千万円" 第16話
ストーブの微かな燃焼音だけが響く部で、千は震えるで温かい茶を啜り、途切れ途切れに語り始めた。
「迫さんは……私の義父なんです。夫の、父親で……」
千の夫は、迫の紹介で警察関連の警備会社に勤めていた。 「署名をしなければ、夫の会社でのを奪い、私の護師免許も警友会の力で取り消すと脅されました……。あの、警察の監察医とも繋がっていて、何でもできるって……」
「千さん。あなた、っているのね? あの部の男が、兄ではないことを」
私の静かな問いに、千はきく目を見き、そして震えながら頷いた。
「……半に、気づきました。図の波形が、も寝たきりののものじゃなかったんです。筋肉の萎縮も全くない。おかしいとって、男が寝ているにこっそり採血して、民の検査関に回しました。そうしたら……カルテにある健さんの血液型と、全く違っていたんです」
千はちがり、鍵のかかったロッカーの奥から、分い茶封筒を取りした。
「私……怖くて、警察にはけませんでした。義父が何をしようとしているのか、々分かっていたのに、自分の活が壊れるのが怖くて……。でも、枝さんが殺されるのだけは、どうしても見過ごせなくて……!」
千は震えるで、封筒のを机のに広げた。
そこには、男の偽装されていない本当の図データ、血液検査の結果報告。
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そして、さなジッパー付きのポリ袋に入った、何本ものタバコの吸い殻が並んでいた。
「男がベランダで隠れて吸っていた吸い殻です。唾液から、DNAが採取できます。本物の健さんの遺留品と照すれば、絶対に言い逃れはできません」
千は涙を流しながら、私のを握りしめた。 そのは、かつての私のように、恐怖と悔しさでえ切っていた。
「枝さん、もうつ……これを聞いてください」
千がのポケットから取りしたのは、型のデジタルボイスレコーダーだった。 彼女は再ボタンを押し、机のに置いた。
スピーカーから、ノイズ混じりの音声が流れした。
の付が液晶に表示されている。 迫と、あの男——森田宏の、密談の記録だった。
『……茨のさえ曜に決済できれば、あとはどうでもいい』 迫の、酷極まりないダミ声が響く。
『健、あの老いぼれ女の麦茶、曜の朝から量を倍にしろ。 造公団ので、疲労困憊した過ぎの無職女が全でポックリ逝ったところで、事件性なんぞやしない。 監察医には話をつけてある。解剖なしで、そののうちに葬送りだ。 あの愚図の骨を拾ってやる奴なんぞ、この世にもいねえんだからよ』
続いて、森田のく濁った、嘲笑交じりの声がスピーカーから吐きされた。
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『へっ、、俺の便の始末までご苦労なこった。 曜の午、信の庫をけたら、そので麻美と阪へびするぜ。 迫さん、アンタもくやれよ』
音声が切れた。
部のに、のような沈黙が落ちた。
スピーカーから流れた奴らの言葉は、言句、すべて私の脳髄に焼き付いた。 解剖なしで、そののうちに葬送り。 骨を拾ってやる奴なんぞ、もいない。
私は静かにちがった。
の震えは、完全に止まっていた。 胸の奥を焼き尽くしていた炎は、いまや絶対零度の氷となって、私の全の血管を巡っていた。
「千さん」 私はレコーダーをに取り、しっかりとコートのポケットに収めた。
「ありがとう。これで、すべてが終わるわ」
「枝さん……どうするつもりなんですか?」 千が怯えたように私の顔を見げた。
私は鏡を見なくても分かっていた。 今の私の顔には、奴らに踏み躙られ続けたれな妹の面など、微も残っていない。
「曜の午」 私はたく微笑んだ。
「奴らのために、最の台を用してあげるのよ」
曜、午分。
造公団402号の畳のに、たいの陽が細く差し込んでいた。 畳半の壁に掛かった古計の秒針が、コチ、コチと乾いた音を刻んでいる。
私は台所の狭い流し台で、湯呑みをつ並べ、薬の入っていないたい麦茶を注いだ。
ひび割れた指先は、もう震えていなかった。