"追い出された四畳半" 第9話
全員の線が、私に集まった。 須藤の顎の筋肉が、ピクリと引き攣る。
私は作業着のズボンのポケットから、枚の折り畳まれた用を取りした。 昨の夕方、千の区役所で発されたばかりの、まだインクの匂いが残る。
『印鑑登録証』
交付:昨 分。
私はその証を、矢代監察官ではなく、の警察官の目のに広げて見せた。
「須藤さんが持っている類に押されている印と、これを見比べてください」
配の警官が眉をひそめ、私の元に顔をづけた。 矢代がバインダーから、須藤が提した申請の原本を取りし、枚のを並べる。
そこに記された印は、まったくの別物だった。
「これは……」 警官が呟いた。
「須藤さんと桐原さんが提した類に押されている私の印鑑は、昨付で区役所に『盗難・失届』を提し、法に失効させた旧印です」 私は歩も引かず、須藤の目を真っ向から見据えた。 「現の私の法な実印は、この証にあるしい印だけです。私が承諾に同した事実はありません。彼女たちが持っている類は、私のに部から盗みされた無効な印鑑を使って偽造されたものです」
須藤の貼り付けたような笑みが、完全に崩壊した。 その瞳の奥に、獣のような黒い敵がギラリとる。
広告
「……何だと?」 須藤の喉から、押し殺した唸り声が漏れた。
「さらに」 矢代監察官が、氷のようにたい声で類をめくった。 「公社の記録、宇佐美茜さんは特定公共賃貸宅の単独承継であり、桐原莉緒氏との親族関係を証する戸籍謄本の添付は切なされていません。須藤さん、あなたが提した『親族同居承諾』に記載された宇佐美茜さんの本籍、これ、どこから持ってきたものですか? 区の戸籍課に照会をかけましたが、該当する戸籍はしませんでしたよ」
莉緒の喉から、ひっ、とい鳴ががった。 彼女の膝がガクガクと震え、壁に背を預けてへたり込みそうになる。
「偽造印私文使の疑いがあります」 配の警官の声から、先ほどまでの迷いが完全に消えっていた。 彼の線が、須藤のスーツの裾、そして居の奥に向けられる。 「須藤さん、ちょっと署までご同願えますか。類の作成経緯について、詳しくお話を伺いたい」
「冗談じゃない!」 須藤が突然、鳴り声をげた。 その態度は変し、裏のチンピラのような凶暴さがわになった。 「民事の類の備だろ! 形式なミスだ! なんで俺が警察にかなきゃならねえんだよ! 令状はあるのか!? ねえだろ!」
「任同を求めているんです」 若い警官が、須藤のを塞ぐように玄関のがり框にをかけた。
広告
「声をすのはやめなさい。所迷惑です」
「触んな!」 須藤は警官のを乱暴に振り払った。 その瞬、彼のポケットから、属製のいカードケースが滑り落ち、玄関のタタキに乾いた音をてて転がった。
からびしたのは、複数枚のプラスチックカードだった。 すべて異なる物の名が刻印されたキャッシュカード。 そして、融関のロゴが入った、未記入のの借用の束。
に落ちたカードの枚に、私の目が釘付けになった。
『流通加協同組 従業員分証 氏名:佐々健』
私の働く物流倉庫の、派遣仲の名義だった。 先、急に連絡が取れなくなって解雇された、おとなしい代半の青の名。
「……それ、どこでに入れたの」 私のから、絞りすような声がた。
須藤はハッとしたようにカードを見ろし、素くしゃがみ込んでそれを掻き集めようとした。 だが、配の警官の革靴が、その首の横にすばやく踏み込まれた。
「須藤さん、かないで。……これ、のカードですね? どういう経緯で所持しているんですか」
「らねえよ! 預かっただけだ!」 須藤は顔を真っ赤にして叫び、警官を突きばそうとした。 「おい、莉緒! ケータイ持ってこい! 弁護士に話しろ!」
「ひっ……い、嫌……!」 莉緒はを塞ぎ、居の隅で蹲って震えているだけだった。
彼女にはもう、目のの事態を収拾する能力など残っていなかった。
「公務執妨害を取るぞ! 落ち着きなさい!」