"追い出された四畳半" 第11話
の活を吸い尽くし、処を奪い、親の遺品をゴミ箱に放り込んでおきながら、自分のにりかかったのを、すべてのせいだと喚き散らす。
「集積所ね」 私はそれだけ言うと、背を向けた。
「ちょっと! 無すんな!」 莉緒が私の腕を掴もうとびかかってきた。
私は振り返り、その首を、物流倉庫で培った力で正確に、そして酷に払いのけた。
バチン、と乾いた肉の擦れる音が狭い台所に響いた。
莉緒がたじろぎ、息を呑む。 彼女は自分の赤くなった首を押さえながら、信じられないものを見る目で私を見つめた。 、彼女に対して度も声を荒らげず、度も逆らわなかった私の目が、今、彼女の喉元を正確に狙う刃のように据わっていたからだ。
「触らないで」 私の声は、く、静かだった。 「あなたの汚いで、度と私に触らないで」
「あ……茜……?」
「午にていって。公社からも言われたでしょう。あなたの同居承認は取り消された。今ここにいること自体が、法占拠よ」
「そんな……く所なんてないわよ! 実にも戻れないし、おだって円もないのよ!」
「るわけないでしょう」 私はややかに言い放った。 「あなたが私の賃を倍に増しして巻きげていたとき、私がどんないで毎晩えたご飯をべていたか、度でも考えたことがある?」
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莉緒のが、パクパクと無様に閉した。 反論の言葉は、もうどこからもてこないようだった。 彼女が寄りかかってきた「見していた相への支配」というが、完全に々に砕け散った瞬だった。
私は莉緒を瞥もせず、傘も差さずに公団の階段を駆けりた。
は激しさを増していた。 濡れたアスファルトを蹴り、敷内のゴミ集積所へとる。 網で囲まれた暗いゴミ集積には、カラス除けの黄いネットが乱暴に掛けられていた。
収集は、まだ来ていなかった。 のに放置された、無数の濡れたゴミの袋。 その番奥、がねて黒ずんだ所に、あの黒いポリ袋が無造作に転がっていた。
私は膝をつき、のに両を突っ込んだ。 指先がたく痺れる。 破れたポリ袋の隙から、母のさな桐箱を引きずりした。
箱の角は無残にへこみ、蓋には靴で踏み躙られたようなの跡がべったりとついていた。 震える指で、蓋をける。
に入っていたのは、母が内職で使っていた錆びた裁ちばさみ、擦り切れた針、そして—— ガラスの割れた、さな写真てだった。
黒にい古いカラー写真。 病のベッドので、痩せ細った顔で微笑む母と、の制を着た私が並んで写っている。 写真の表面には、とが入り込み、母の顔を半分、無残に汚していた。
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私は自分の濡れた作業着の袖で、母の顔についたを、何度も、何度も、丁寧に拭った。 拭えば拭くほど、粗悪なプリントのが褪せていく。
「……ごめんね、お母さん」
音が、私の呟きを掻き消していく。 涙はなかった。 ただ、喉の奥が焼け付くようにかった。
このたちは、私の貧しさを嗤い、私の労働を奪い、そして最に、私がこの世で唯されていた記憶すら、のに投げ捨てたのだ。
絶対に、許さない。 ただ追いすだけではりない。 彼女たちが犯した罪のすべてを、円の狂いもなく、法と社会の底引き網で掬いげ、骨の髄まで精算させてやる。
桐箱をしっかりと胸に抱きかかえ、私はちがった。
部に戻ると、居の扉は固く閉ざされていた。 莉緒が内側から鍵をかけているようだった。 から、誰かと話で言い争うヒステリックな喚き声が漏れ聞こえてくる。
「……だから! 拓真くんが捕まったのよ! どうすんのよ、あの部使えないわよ! ……え? 関係ないってどういうこと!? 私、名義貸しただけじゃない!」
相に方に切られたのか、ツーツーという無質な切断音の、何かが壁に投げつけられて砕ける破壊音が響いた。
私は自である畳半に入り、濡れたを着替えた。 押し入れの奥から、古い型のドライバーと、かつて母が使っていたさな鏡を取りす。
この公団の部には、もうつ、彼女たちが決して気づいていない角があった。