みかん小説
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"追い出された四畳半" 第12話

台所と居を隔てる壁の通気。 昭の建築特の、属製のルーバーがついたさな換気だ。 の油煙で茶く固着しているが、その隙は、居井付へと直接繋がっている。

私は踏み台を使い、音をてずにドライバーで通気のネジを緩めた。 錆びたネジが、ギシ……とさく鳴る。 私は息を止め、慎にルーバーの枠をした。

暗い空洞の向こうから、居々しい気配が流れ込んでくる。 タバコの焦げた臭気。 そして、莉緒が爪を噛むギリギリという神経質な音。

私はポケットから、物流倉庫の備品チェックで使っていた、古いICボイスレコーダーを取りした。 充ケーブルを繋いだまま、通気の奥、梁のの窪みへと滑り込ませる。 録音ボタンを押すと、さな赤いランプが、暗で静かに灯った。

これでいい。 彼女がこれから誰と話し、どんな言い逃れを画策しようと、そのすべてがこのさな械に刻まれる。

計の針は、正午を回ろうとしていた。

私は畳半の畳のに正座し、母の桐箱を膝のに置いた。 たいが、ガラス窓を激しく打ち鳴らし続けている。

そのだった。

ガタガタガタッ!

に、玄関の鉄扉が、激しく揺すぶられた。 鍵はかかっているはずだった。 だが、側から郵便ポストの投入が乱暴にこじけられ、何者かの濁った線が、内の暗い廊を覗き込んでいる気配がした。

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「……おい。桐原莉緒いるだろ」

く、押し殺した男の声だった。 須藤の声ではない。 もっと粗野で、乾いた、底辺の暴力の匂いを漂わせた声。

「拓真と連絡がつかねえんだよ。……おい、けろよ。ドア越しでいいから、の話つけようや」

ドスッ、とい靴の先で鉄扉が蹴られた。

のドアが勢いよくき、莉緒が狂ったような形相で廊してきた。 彼女の目は血り、唇はに変していた。

「ひっ……!」 莉緒は玄関のドアを見つめたまま、声にならない鳴をげてそのに崩れ落ちた。

扉の隙から、枚の黄が滑り込んできた。 に濡れたタタキのに落ちたそのには、赤黒い文字で、こう殴りきされていた。

『本ニ連絡ナキ、親族・勤務先ヘノ斉回収ニ移スル』

男の音が、をペタペタとゆっくりざかっていく。

莉緒はいつくばったまま、その黄を震えるで拾いげた。 そして、次の瞬、彼女の線が、畳半の入りに静かにつ私へと向けられた。

その目は、もはや理性を失っていた。 絶望と、歪んだ逆みが極限まで煮詰まった、狂の目だった。

「茜……あんたのせいよ」 莉緒はを握り潰し、血の滲むような声で呟いた。 「あんたが……あんたが警察なんか呼んで拓真くんを連れてかせたから……! あいつらが来ちゃったじゃない……!」

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彼女はがり、キッチンのワゴンに置かれていた果物ナイフへと、狂気じみた速さでを伸ばした。

私は歩もかなかった。 ただ、たく研ぎ澄まされた線で、その狂態を見据えていた。

「どうするの? 刺すの?」 私の声は、自分でも驚くほど静まり返っていた。 「警察は、まだくにいるわよ。あなたが私を傷つければ、その瞬に現犯逮捕。もう借どころの話じゃなくなる」

莉緒のが、ナイフの柄を握りしめたまま止まった。 彼女の全が、激しいりと恐怖で痙攣するように震えている。

ていって」 私はもう度、宣告した。 「これが、最の警告よ」

莉緒はナイフを取り落とした。 カラン、と属音が、たいに虚しく響き渡る。

彼女は顔を両で覆い、獣のような声をげて泣き叫びながら、自分の部へと逃げ戻っていった。

だが、私はっていた。 これが終わりではないことを。 追い詰められたが、最に何をしでかすか。 そして、あの警察に連れてかれた須藤が、このまましく引きがるはずがないことを。

は、止む気配もなく、公団の老朽化した壁を削るようにり続いていた。 計の針は、午を指していた。

本当の悪は、夜のとともに、まだ始まってすらいなかったのだ。

い督促状が、湿った玄関のタタキので、を放っていた。

を吸ってふやけた粗悪なの端が、めくれた皮膚のように反り返っている。

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