"追い出された四畳半" 第14話
だと信じ込み、その威を笠に着て私を追いそうとしていたが、実際には須藤もまた、や違法ブローカーに追われるただの自転操業の詐欺師に過ぎなかったのだ。 そして莉緒自も、その須藤に名義を貸し、利貸しから借をねていた。
私はイヤホンをさず、元のメモ帳にボールペンでを記録した。 『14:12 坂本なる物へ話。350万円の返済期限が本。公団居権の担保化に言及』
徹な記録。 を交えない、ただの事実の羅列。 これが、の朝、彼女たちを社会の底へ叩き落とすための確実な杭になる。
午半。 のは向にまる気配を見せず、暮ののが団全体を包み込み始めた。 共用廊の蛍灯が、チカチカと気な瞬きを繰り返しながら点灯する。
そのだった。
階段をがってくる、くを引きずるような音が聞こえた。 段、また段。 鉄のステップを踏みしめるそのみは、昼に訪れた取りてのものではない。 もっと聞き慣れた、そして今この瞬、もっとも警戒すべき男の音だった。
須藤拓真。
私はイヤホンを素くポケットに隠し、自の襖の隙から、玄関の方角を覗き見た。
ガチャリ、と鍵が乱暴に回される。 属の擦れる嫌な音とともに、鉄の扉が押しけられた。
っていたのは、ずぶ濡れの須藤だった。
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仕ての良いはずのネイビーのスーツは、とを吸って見るもなく変し、肩がたく垂れがっている。 ネクタイは引きちぎられたように歪み、髪料で固められていた髪が、額にべっとりと張り付いていた。 その顔は気で、唇の両端には乾いたい泡がこびりついている。
警察は、やはり彼を拘束しきれなかったのだ。 矢代監察官が危惧していた通り、令状のない任同では、相が「弁護士を呼ぶ」「黙秘する」と突っぱねれば、半で釈放せざるを得ない。 本の警察組織の隙を、この男は擦り抜けて戻ってきた。
だが、その目は完全に狂気に染まっていた。
「……おい、莉緒」 須藤は靴を脱ぎ捨てもせず、のままがり框にだらけの革靴を踏み入れた。 そのには、コンビニのウイスキーの角瓶が握られていた。 キャップはけ放たれ、烈なアルコールの刺激臭が、狭い廊に瞬で充満する。
居のドアが、恐る恐るいた。 莉緒が、幽霊のように青ざめた顔で顔を覗かせる。
「拓真くん……! 丈夫だったの!? 警察は……」
「うるせえ」 須藤はく吐き捨てると、居へ踏み込み、ウイスキーの瓶をローテーブルのに叩きつけた。 ガツン、とガラスが鳴り、テーブルのの雑誌がねる。
「あのクソ公務員どもが……散々ネチネチ調べげやがって。
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俺の、署の裏にめてあったやつ、差し押さえの続き取りやがった。座も凍結寸だ」 須藤はソファに倒れ込み、ウイスキーを瓶から直接、喉を鳴らして呷った。 琥珀の液体が元から溢れ、ワイシャツの胸元を汚していく。
「どうすんのよ……!」 莉緒が取り乱して須藤の膝にすがりついた。 「さっき、坂本さんからも話があったの! 今に入れないと、事務所に乗り込むって……! 拓真くん、なんとかしてよ! 私、もう自己破産もできないって言われたのよ!」
「黙れって言ってんだろ!」 須藤が鳴り、莉緒の肩を乱暴に突きばした。 莉緒の体が、ローテーブルの角に激しくぶつかる。 鈍い打撲音とともに、莉緒のから「痛っ……」と呻きが漏れた。
だが、須藤は彼女を見ろすことすらしなかった。 血った瞳が、ギラギラと獲物を探す獣のように宙を彷徨っている。
「の朝だ」 須藤は掠れた、しかし酷な声で呟いた。 「の朝、役所がくのと同に、あの宇佐美茜の退届と名義変更の原本を、本庁の窓に叩き込む。公社の監察課がいてようが関係ねえ。本庁の戸籍・宅管理課に、本の印鑑証付きで受理させちまえば、システム、名義は桐原莉緒に移る。旦移っちまえば、こっちのもんだ」
「でも……茜の実印、あいつ昨、役所で廃止したって……」
「関係ねえよ!」
須藤がウイスキーの瓶を振り回した。 「あんなのハッタリに決まってんだろ! 代の世らずの派遣女が、半で改印続きなんてできるわけねえ! 警察の野郎どもが俺を揺さぶるために言わせた芝居だ! いいか、莉緒。