みかん小説
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"680億円の取引を救った秘密の多言語" 第11話

の温かい拍、私は集まった々にげた。

あの教壇ので、恐怖で声がせなかった。あれは決して挫折の終わりではなく、私のすべての始まりだったのかもしれない。

――もう、「話せない」のではない。「話すのが怖かった」だけだったんだ。

でも、もう丈夫だ。

それを私の代わりに教えてくれた最が、今、すぐ隣で微笑んでくれているから。

ふと、会社のを通りかかったで雑巾を懸命に絞る音が聞こえてきた。

そのつきはどこかぎこちなく、見慣れない雑用に器用なつきで悪戦苦闘しているのスーツ姿の男がいた。

かつては営業部として社内で傍若無に威圧に振るっていた鬼が、今は誰よりもく朝に社し、社内の細々とした備品を管理し、雑用を黙々とこなしていた。

誰ももう彼を「部」と呼ぶ者はいない。けれど、静かで、誰にも逆らわずにただ淡々と作業をこなすその背は、見るからにどこか寂しそうにも見えた。

「……お疲れ様です」

「あ……あぁ……」

瞬だけ、線が交差した。

その鬼の瞳には、ほんのわずかの悔しさと、取り返しのつかない悔のが滲んでいた。

でも、私はそれ以、彼に対して余計な言葉をかけようとはしなかった。

は、肩や役職なんかじゃない。

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たとえどこで、どんなに落ちぶれようとも、誰かのために役にてるき方ができるなら、それで分なのだから。

そしてあるフランスの美しい美術館を察して回った帰り、私は通の質なにしていた。

には、ささやかな輝きを放つ指輪と、きのシンプルなメッセージが添えられていた。

『よし、今度こそ』

その京のまばゆい夜景が見ろせるホテルの最階ラウンジで、私は彼女に向かって真っ直ぐにがった。

「しおりさん……いや、しおり」

彼女が驚いたような、し潤んだ顔でこちらを見げる。

「あなたが僕に声をかけてくれたから、僕は自分の言葉で、自分のきていけるようになりました」

「えっ……」

「だから……これからのも、あなたと同じ言葉で、同じ歩幅で緒に歩いていきたい。どうか、僕と結婚してください」

織は瞬、言葉を失ったように目を見いた。だが、すぐにおしそうにさく微笑んで、こう言った。

「……通訳なんていささかもいらないくらい、あなたの気持ち、ちゃんとまっすぐ伝わってきたわ」

そして彼女はそっと私のを取り、差しした指輪を受け取ってくれた。

「ありがとう」

言葉というものは完全で、にはを簡単に傷つけてしまう。

けれど、それ以に、く繋ぎわせる温かい力がある。

カ国語を完璧に操ることができても、かつては自分の気持ちすら話せなかった私が、たったするに、自分の本当の言葉を真っ直ぐに届けることができた。

それが、私のにおいて何よりも誇らしく、おしい。

私はこれからも、自分の声を世界へと届けていく。

「話すことの怖さ」ではなく、「から通じうことの奇跡」を、私はもうすべてっているから。

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