"息子が私の家を売る夜" 第4話
でも、母さんのをそんなに急いで……」
介の声でした。覇気のない、言い訳をするようない声です。
「急ぐに決まってるでしょう! 練馬のあの、駅からはしいけど、角で坪あるのよ。今、解体して更にして売りにせば、千百万はらないって産の査定がてるの」
産の査定。 その単語がにび込んできた瞬、私の臓がドクンと嫌なね方をしました。
「更って……あのには、親父と母さんが何もんできたんだぞ。母さんの荷物だってまだ全部あそこにある」
「あんなボロ、残しておいたって固定資産税と維持費がかかるだけじゃない! 更にしないとく売れないの。荷物なんて、必なものだけトランクルームに放り込んで、あとは産廃業者に頼んで気に処分すればいいのよ」
産廃業者。 処分。
夫と私が、代のに爪にを灯すような節約をして建てたあの。縁側から見えるさな庭には、介が学に入学したに記に植えたハナミズキのがあります。健が曜で直した縁側の板、介の背丈を刻んだ柱の傷。
それらをすべて「ゴミ」として処分すると、智美さんは平然と言い放ったのです。
「でも、母さんがうんと言うはずがない。さっきも『練馬に帰る』って言いしてただろ」
介のその言葉に、智美さんはでさく笑いました。
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たく、嘲笑うような笑い声でした。
「だから言ったじゃない。お義母さんにはもう、判断能力がないことにするのよ」
「……え?」
「先週、私がで域包括支援センターにって相談してきたわ。『義母の物忘れがひどく、徘徊の危険やの始末の恐れがある』ってね。来週、役所の認定調査員が来るでしょ? そのにお義母さんが余計なことを言わないように、私が全部受け答えをするの。かかりつけ医にも、物忘れの相談をしてあるわ。軽度の認症っていう診断さえに入れば、あとは成見か、族信託の続きをめられる」
私のので、昼の智美さんのが本の線に繋がりました。
所の坂井さんに「お塩とお砂糖を違えた」と言いふらしたのも。 私の財布と通帳を取りげたのも。 すべては、私を「判断能力を失った無力な老」に仕てげるための、綿密な堀埋めだったのです。
「族信託……」
介が呟きました。
「そうよ。介さんを受託者にして、お義母さんの財産管理権をあなたが持つ形にするの。そうすれば、お義母本の同がなくても、あなたが代理として練馬のと建物を売却できる。売却益でこののローンを括返済して、残りは由紀の学費と、私たちの老資に回すのよ」
「そんなにうまくいくのか……? 成見制度だって、庭裁判所が関わるんだろ。
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弁護士や司法士がに入ったら……」
「だから、そのに信託契約を結んじゃうのよ! そのためには、お義母さんの『実印』と『印鑑登録カード』、それにあのの『権利証』が必なの」
智美さんの声に、隠しきれない欲望のが帯びていました。
「権利証は練馬の仏壇の引きしにあるって、にお義母さんがポロッと言ってたわ。問題は実印よ。入院するに持ってきた提げバッグのを探したんだけど、印鑑だけは見当たらなかったの。介さん、お義母さんがどこに隠しているからない?」
「いや……母さんの貴品は、昔から父さんの形見の黒い革の提げか、さな桐の箱に入ってたような気がするけど……」
「、お義母さんがデイサービスの見学にっているに、部を徹底に探すわ。見つからなければ、紛失したことにしてしく改印届をせばいいだけの話だしね」
「おい、そこまでするのか……」
介が、気圧されたように呟きました。 私は息を詰め、暗ので息子の次の言葉を待ちました。
やめてくれ、と。 そこまでして母さんを裏切ることはできない、と。 親父が遺してくれたを、母さんを騙して奪うような真似はできない、と。
血の繋がった息子なら、私が腹を痛めて産み、く塩にかけて育ててきた介なら、そう言って踏みとどまってくれるはずだ。
私ののどこかに、まだそんな甘い期待が残っていました。