骨折で息子の家に身を寄せると、嫁は私を「ボケが始まった」と近所に言いふらし、財布と通帳まで取り上げた。深夜二時、私は夫婦の密談を聞く。「認知症ということにすれば、あの家は売れる」。狙われていたのは、亡き夫と守ってきた家だった。しかも二人は、私の実印を探している。翌朝、私は桐の箱を食卓に置いた。「これ、あなたが預かって」。奪われると分かっていて、私はなぜ実印を差し出したのか。
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