"息子が私の家を売る夜" 第22話
私は、元で泣きじゃくる息子のから、静かに言葉を落としました。
「あなたが困っているから、親のを奪っていいと、いつ誰が教えたのですか?」
介の嗚咽が、ピタリと止まりました。
「成瀬先、あれをおしいただけますか」
「承しました」
成瀬先は静かに頷き、黒い革のブリーフケースから、冊の古びた学ノートを取りしました。 表には、私の几帳面な文字で『計補助および特別支控除録』とかれていました。
成瀬先がそのノートをき、テーブルのに置きました。 、介が学を卒業したから、私が健さんとで記録し続けてきた、冊の納記録でした。
「介くん、よく聞きなさい」
成瀬先が、々しい声でノートの頁を指し示しました。
「平成、君がこのを築で購入した際、として子さん夫妻の預から拠された額は、百万円。贈与税の特例申告をい、非課税枠を適用して君に無償で交付されたものだ」
智美さんが、息を呑んでノートを見つめました。
「平成、君たちの結婚式の費用の分として、百万円。平成、由紀さんの私学受験の準備費用および入学として、計百万。さらに、過、君が『ボーナスカットで苦しい』と実に泣きつくたびに、健さんと子さんが君の個座に振り込んだ活支援の総額は、百万円に達している」
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成瀬先は淡々と、しかし容赦のない数字を読みげました。
「計して、千万円。……介くん、君はすでに、くなられたお父さんの遺産と、子さんの老資から、千万円以を借りの形で受け取っているんだよ」
リビングが、凍りついたように静まり返りました。 介は額を畳につけたまま、縛りに遭ったようにピクリともかなくなりました。
智美さんは、まるで幽霊でも見るような目でノートを凝していました。 彼女は介から「実からはほとんど援助を受けていない」「親父の遺産は全部お袋が握り込んでいる」と聞かされていたのでしょう。その嘘が、公関にも提能な入の控えとともに、今、のに晒されたのです。
「介」
私は、静かに息子を見ろしました。
「親が子供を育てる責任は、あなたが学を卒業し、社会にて自したに終わっています。それ以、私があなたに差ししてきたおはね、親としての義務ではなく、ただの好と甘やかしだったのよ」
私の声は、決して荒らげてはいませんでした。しかし、言句が、息子の逃げを塞ぐ杭のように打ち込まれていきました。
「私はあなたを助けてきたつもりだった。でも、それは違いだったのね。私の与えた援助が、あなたの背骨を溶かし、自分のでつ力を奪い、ついには『親のものは全部自分のものだ』という浅ましい錯覚を植え付けてしまった」
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「母さん……っ」
「智美さん」
私は、呆然とち尽くす嫁に線を向けました。
「あなたはこのを売り、私をこのに囲い込み、判断能力を奪って成見の申してをするつもりでしたね。『男の嫁だからてあげる』という美しい名目のもとに、私のと老資をすべて自分たちの活防のために吸いげるつもりだった」
智美さんの唇が、わなわなと震えました。
「ち、違います……! 私は、ただ族みんなが助かる方法を……!」
「私の尊厳をで踏みにじってに入れたでべるご飯は、さぞかし美しかったでしょうね」
私の氷のような言に、智美さんは息を呑み、力なくずさりをしました。
「もう結構です。あなたたちに、私の老を預ける気は毛ありません」
成瀬先が、ブリーフケースからもう通の類を取りしました。 ので綴じられ、赤い公印が鮮やかに押された正式な類――京都宿公証役で作成された『公正証による任見契約および財産管理等委任契約』でした。
「先週の曜、子さんと私とので、公証の面で正式に締結された公正証です」
成瀬先が類をテーブルに提示しました。
「練馬の建物につきましては、すでに信託を通じて、ディベロッパーへの売却契約が内定しております。