"息子が私の家を売る夜" 第19話
私はややかに言い放ちました。
「さらに言えば、昭の築の建築確認通、および平成に施した根の葺き替えと壁塗装の事完引渡証、過の固定資産税・都計画税の納税証は、すべて練馬のの斎にある私の防庫のに、系列順にファイリングして保管してあります。の境界杭についても、側と側の官民境界票はコンクリート杭、側の民民境界は真鍮鋲で完全に示されており、界確認は隣接する軒の所者全員から受領済みです」
私は類をテーブルの央に、静かに滑り戻しました。 トン、とが揃う音が、静まり返った部によく響きました。
「これだけの事項の確認を怠ったまま、概算の査定枚で更売却を急がせるなど、都リアルエステートさんのようなでも、ずいぶんと杜撰な仲介をなさるのですね」
静寂。 完全な、絶対な静寂がリビングを支配しました。
さんはを半きにしたまま、額から滝のような汗を流していました。 彼が今対峙しているのは、「物忘れがした無力な老」などではありませんでした。自分の所する産の権利関係、境界、税務、修繕履歴のすべてを、法律並みの精度で完全に把握している、恐るべき当事者だったのです。
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「お、お母様……変失礼いたしました……! 私どもの調査で……」
さんが子ので々とをげました。 その景を見て、智美さんの顔が真っ赤に沸騰しました。恐怖と焦燥が、彼女の理性を完全に吹きばしたようでした。
「な、何言ってるのよ! さん、惑わされないで!」
智美さんはちがり、ヒステリックに叫びました。
「お義母さんは昔のことを適当に並べてるだけよ! 寄りの昔話よ! 介、何を突っってるの! く印鑑を押して、契約を成させなさい!」
「と、智美……でも……」
介は完全に怯え、震えるで印鑑を握り直そうとしました。 親子のなど、そこにはありませんでした。ただ、目のの圧倒な母親のから逃れたいで、彼は智美の命令に従おうとしていたのです。
「押しなさい! 実印はあるのよ! この印鑑があれば、売れるんでしょう!? さん!」
智美さんが、介のを引に掴み、朱肉に印鑑を押し付けようとしました。
そのでした。 これまで静かに腕を組んで成りきを見守っていた成瀬先が、く、いため息をつきました。
「智美さん、介くん。……それ以、見苦しい真似はやめなさい」
成瀬先の威厳に満ちたが、リビングの空気を切り裂きました。 智美さんのが、ビクッと止まりました。
「成瀬さん……! のくせに、首を突っ込まないでください! これは私たち族の問題です!」
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「族の問題、ですか」
成瀬先はややかに目を細めると、膝ののブリーフケースをけました。 から取りしたのは、枚の公な証でした。緑の透かしが入った、京都練馬区役所が発した公式な公文でした。
バサリ。
その類が、テーブルの央、あの桐の箱のすぐ隣に置かれました。 類の最部には、太い文字でこう印刷されていました。
『印鑑登録廃止申請 受理通』 『申請:令』 『申請者:島子』
智美さんの線が、その類に吸い寄せられました。 介の顔から、急速に血の気が引いていきました。
「……いんかん、とうろく……はいし……?」
智美さんの掠れた声が漏れました。
成瀬先は、縁の鏡のブリッジを指先で押しげながら、淡々と、しかし容赦のない事実を告げました。
「子さんが先、腿骨の骨折で入院された翌のことです。病の子さんから私の事務所に緊急の連絡が入りましてね。『自宅を留守にする、万がの盗難や正な名義変更を防ぐため、現登録されている実印を直ちに廃止したい』と」
成瀬先の言葉が、氷の刃のようにの胸に突き刺さっていきました。
「私は子さんの正式な委任を受け、入院先の医師の診断――当然ながら、『本の能力・判断能力には何ら問題なし』と記された完全な診断です――を添えて、練馬区役所に赴き、印鑑登録の廃止続きを完させました。