"息子が私の家を売る夜" 第12話
「あのを残しておいたって、維持費がかかるだけなのよ! 体、これ全部、あなたの学の学費のためなのよ!?」
智美さんはヒステリックに叫びました。
ちょうどその、玄関のドアがき、介が帰宅しました。
「ただいま……何だ、何の騒ぎだ?」
介がリビングに入ってきた瞬、由紀はその類を父親の元へと投げつけました。バサリとが散らばります。
「お父さんもってたの!? これ、お父さんも緒になってめてたの!?」
介はに散らばった査定とパンフレットを見て、息を呑みました。
「由紀……お、声すなよ。母さんに聞こえたら……」
「聞こえたら何なの!? やましいことがあるから隠してるんでしょ!?」
由紀の目から、粒の涙がポロポロとこぼれ落ちました。
「おばあちゃんはね、私がさい頃、お父さんとお母さんが共働きで忙しかった、毎練馬ので私にご飯作ってくれたんだよ! がたも、ずっとを握っててくれたんだよ! 私がピアノやりたいって言った、おばあちゃんが自分の着物売っておしてくれたの、私ってるんだよ!」
由紀の叫びが、私のいる客の襖を震わせました。
「それを……何なの、このパンフレット! 『判断能力のした齢者のための』って……おばあちゃん、ボケてなんかないよ! 私の学の話も、友達の名も、全部ちゃんと覚えてる! 今朝だって、私の好きな卵焼きの付け、お母さんに教えてくれてたじゃない! なんでそんな嘘ついてまで、おばあちゃんからを取りげようとするの!?」
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「黙りなさい!」
パチン、と乾いたい音がリビングに響き渡りました。
智美さんのが、由紀の頬を平打ちした音でした。 由紀は打たれた頬を押さえ、信じられないというように目を見いて母親を見つめました。
「気なを聞くんじゃないわよ!」
智美さんの顔は、りと焦燥で醜く歪んでいました。
「誰のおかげで自由なく暮らせてるとってるの!? あなたを私のに通わせて、い予備代払って、学にかせるために、私たちがどれだけをげて、どれだけ切り詰めてるか分かってるの!? 綺麗事だけできていけるわけないでしょう! あのボロを売って何が悪いのよ! お義母さんだって、このに置いてあげてるんだから分親孝じゃない!」
「そんなおで……」
由紀は震える声で言いました。涙が、彼女の顎からポタポタとに落ちていきます。
「そんな汚いおで学になんか、きたくない……! お父さんもお母さんも、最だよ! っ嫌い!」
由紀はそう叫ぶと、散らばった類を踏みつけるようにして、階段を駆けがっていきました。 階で、激しくドアが閉まり、内側から鍵がかかるい音が響きました。
リビングには、苦しい沈黙が残されました。 智美さんは肩をに揺らして荒い息をつき、に散らばった類を忌々しそうにかき集めました。
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「……何突っってるのよ、介さん。しは父親らしく叱りなさいよ」
「……ああ」
介は力なく答えただけでした。 その背は、罪悪と自己保で、今にも押しつぶされそうに丸まっていました。
私は、客の暗がりので、襖の隙からその景を静かに見届けていました。
由紀。 優しい、私のい孫娘。 あの子の涙と、あの子が叫んでくれた言葉だけで、私がこれまできてきたは、決して無駄ではなかったとえました。
同に、私のので、徹な決断の炎が燃えがりました。
この沼に、由紀の未来を巻き込んではいけない。 介と智美の浅ましい欲望のために、あの子のをこれ以傷つけさせてはならない。
そのためには、すべてを終わらせるしかありませんでした。
その夜の夜過ぎ。 コンコン、と私の部の襖が控えめにノックされました。
「……母さん、起きてるか?」
介の声でした。昼の荒々しさは消え失せ、ひどく掠れた、けない声でした。
「ええ、起きているわよ。お入りなさい」
襖がき、介が滑り込んできました。 彼は部のかりをつけず、かりが差し込む畳のに、正座をしました。その額には、びっしりとや汗が浮かんでいました。
「介、どうしたの? こんな夜に」
私が布団から体を起こすと、介は震えるで私の首をそっと握ってきました。