"片親の分際で、100年早い" 第9話
その全てが、今、燃えている。
炎はをいがり、俺の名を焼いた。藤川陽——祖母に育てられ、祖母の姓を名乗ってきた俺の名。自分の力だけでいがると決めたにいた名。その3文字が黒く炭化していく。志望の欄には5歳で母を失ったのことをいた。自己PRには祖母の介護をしながら受験勉を続けた々を記した。臨実習の記録には初めて患者のを握ったの震えを正直に綴った。その全てがに変わっていく。
パチパチ、との焼ける音が静まり返った面接に響いている。乾いた、容赦のない音。それは俺の6が燃え尽きていく音だった。
俺は見きが取れなかった。りよりも、しみよりも、ただ呆然としていた。本の医療を担う学病院の最終面接ので、1のの努力を象徴する履歴を燃やすなんて。
柴田護部の顔が蒼になっているのが見えた。唇が震えている。教授陣も言葉を失い、互いに線を交わすことすらできずにいる。誰もが戸塚のに衝撃を受けていた。しかし、誰も止めようとしなかった。権力のに正義は沈黙する。俺は今、その現実を目の当たりにしていた。
炎が履歴全体に広がり、やがて燃え尽きた。残ったのは、黒いだけだった。
「ほら見ろ、こんなもんだ」
戸塚が燃え尽きた履歴を皿に落とした。
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面接にはの焦げる匂いが充満している。
「片親育ちの苦労話なんて、俺にとってはゴミみたいなもんなんだよ。どれだけ綺麗事を並べても、君のバックグラウンドは変わらない」
俺は黙ってになった履歴を見つめていた。皿ので黒い塊がかすかにくすぶっている。あれが俺の6だ。寝るも惜しんで勉した々。バイトと学業を両させた夜。患者のを初めて握ったの。全てがあの黒いのに消えていった。
りは確かにあった。しかしそれ以に、しかった。6の努力がこんな形で否定されるなんて。母さん、見ているかな? 俺は今こんな所にいる。あなたが残してくれた命を精杯きようとしてきたのに、こんな形で侮辱されている。
「分かったか、藤川君。これが現実だ。片親のはどこまでっても片親なんだよ。いくら頑張ったっておの過は消せない」
俺は何も言わなかった。言葉がなかった。
「さあ、もう帰れ。2度とこの病院に来るな」
その言葉が最通告だった。俺はもうここにいる資格がないのだと。俺は呼吸をした。りを押し殺し、静さを取り戻そうとした。
しかしその、「待ってください!」と柴田護部が再び声をげた。
「戸塚さん、これはき過ぎです! いくら何でも受験の履歴を燃やすなんて、事の問題ではありません。
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としての問題です!」
戸塚は柴田護部の言葉を蹴した。「事のことは任せてもらっている。をすな」と。
「これは事の問題じゃありません! としての問題です!」 「としての問題? バカバかしい。俺はこの病院のために適切な材を排除しているだけだ」 「適切? 藤川さんの何が適切なんですか! 成績は優秀、臨実習の評価もい、面接での受け答えも派でした!」 「そういう問題じゃない。こいつは片親なんだよ。片親育ちのは、精神に定なんだ」 「それは偏見です! 科学根拠のない差別です!」 「差別? 俺が差別をしているっていうのか!」
戸塚の顔がりで潮した。
「俺はね、柴田さん、この病院のために30働いてきたんだ。事のプロとして数えきれないほどのを見てきた。その経験から言っているんだよ。片親のは使えない!」 「信じられません……」
柴田護部がしそうな目で戸塚を見つめた。
「あなたはを見る目があるとっていました。でも、こんな偏見に囚われているなんて……」 「偏見じゃない、事実だ!」
戸塚が俺をにらみつけた。「おい、藤川、まだそこにいたのか。帰れと言っただろ」
俺はかなかった。燃え尽きた履歴、そのを見つめたままち尽くしていた。り、しみ、悔しさ、様々なが嵐のように渦巻いている。
目の奥がくなり、喉の奥がきつく締まる。しかし、それ以にいが俺ので燃えがっていった。