"片親の分際で、100年早い" 第16話
おが残してくれた命が、こんなにきくなった。ありがとう、美鈴」
俺も目がくなった。
「母さん」
俺は墓に向かって話しかけた。
「俺、医者になったよ。これから1でもくの命を救えるように頑張る」
が吹いた。桜のびらがい、墓のに落ちた。
「父さんとも仲直りした。はかかったけど、今は緒にいられるよ」
父が俺の肩にを置いた。
「美鈴、陽を守る。今度こそそばにいる。約束する」
母がくなった、俺は5歳だった。何も分からなかった。ただ、母がいなくなったことだけが分かった。
それから19、俺は1できてきた。辛いこともしいこともあった。でも諦めなかった。母が残してくれた命を無駄にしたくなかったからだ。
そして今、俺は父と緒にここにいる。母の墓ので2でをわせている。線の煙が空に昇っていく。その煙を追うように線をげた。空は青く、1つない。こんなに穏やかなに母を訪ねることができてよかった。
俺と父はしばらく黙って墓のにっていた。言葉は必なかった。ただ同じ所で同じをっている。それだけで分だった。
やがて父がをいた。
「美鈴と会ったのは、この病院でね……」
俺は黙って聞いていた。父が当を振り返り、話し始めた。
「俺は当、親父の名に押しつぶされそうだった。
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周りからは『お坊ちゃん』とを叩かれ、実力を認めてもらえなかった。でも、美鈴は違った。俺の柄なんて気にしなかった。『あなたがどんな医者になりたいのか、それだけを見てる』って言ってくれたんだ」
父の目がを見つめていた。
「あの言葉に救われた。だから必に努力した。親父の名じゃなく、自分の実力で認められるために」
父はそう続けた。
「おが再した、姓には戻さない、『自分の力でを切りきたい』と言っただろう。あの、俺は美鈴のことをいした。おもまた、自分の力でを切りこうとしている。美鈴の血が確かに流れているんだとったよ」
俺は墓を見つめた。代美鈴。母の名がの差しに照らしされている。
あのから19、俺は祖母に育てられ、祖母の姓を名乗ってきた。再も代姓には戻さなかった。自分の力でを切りきたかったからだ。それは育ててくれた祖母への敬であり、俺自の誇りでもあった。
ので母に語りかけた。
——頑張るよ、父さんと緒に。
が吹いた。く、優しいだった。桜のびらがいがり、空く昇っていく。どこまでもく、まるで国まで届くかのように。
俺は目を閉じた。まぶたの裏に母の笑顔が浮かぶ。5歳の俺を抱きしめてくれた温かい腕。「丈夫、あなたはい子よ」
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と言ってくれた優しい声。
——母さん、俺は今、父と緒にあなたのにっている。いがかかった。たくさんの苦しみがあった。でも、ようやくここまで来たよ。あなたが残してくれた命を、俺は精杯きていく。父と緒に。
が頬を撫でた。びらが空にう。まるで母が私たちを祝福してくれているかのようだった。
あれから1が経った。
今、俺は学付属病院の研修医として働いている。をまとい、病棟を駆け回る毎だ。朝は7に病院に着き、夜は付が変わる頃に帰宅する。休みはに数。それでも疲れをじたことはない。臓科を志望していた俺だが、最初の1は様々な科を回った。
内科では性疾患とのい付きい方を学び、科では術の緊張を体験した。児科では子供たちの笑顔に励まされ、産婦科ではしい命の誕にち会った。どの科にも学ぶべきことがあった。
里佳も同じ病院で研修医として働いており、最よく2で事にくようになった。まだ恋という関係ではないが、しずつ距が縮まっている気がする。
父とは週に1度は事を共にするようになった。委員で2でコーヒーをむこともある。まだ気恥ずかしい部分もあるが、しずつ普通の親子にづいている。先、父がこんなことを言っていた。
「陽が隣にいてくれることが、嬉しいよ」
俺は素直に「ありがとう」と返すことができた。
戸塚のことは々いす。
彼が今どこで何をしているのか、詳しくはらない。でも彼も、彼なりのを歩んでいるのだろう。片親という言葉で傷つくがいなくなればいい。庭環境でを判断する社会が変わればいい。
俺1の力では社会は変えられないかもしれない。でも、目のの患者を救うことはできる。1ずつ、1ずつ。その積みねがいつかきな力になると信じている。
もし母がきていたら、今の俺を見て何と言うだろう?
きっと微笑んでくれるはずだ。「よく頑張ったね」と、あの優しい声で言ってくれるはずだ。
5歳のあの、あなたを失った俺は今ここにいる。を着て患者と向きっている。あなたの息子は医者になった。見守っていてください。
これからもを向いて歩いていく。あなたが教えてくれたさを胸に。