"3000万円と捨てられた母の罠" 第1話
夕方の6をし過ぎた頃、健が玄関のドアをけて入ってきた。いつもより表がるいようだった。はる子は台所で皿洗いをしていたを止め、顔をげた。
「お母さん、今はいい気だから、しにでも当たりにきませんか?」 健の声は軽やかだった。嫁のさやかもろから入ってきて微笑んでいた。 「そうですよ、お母さん。最にずっといらっしゃったじゃないですか。ドライブでもしてきたら気持ちがいいとって」
はる子はを拭きながら窓のを見た。すでに辺りは暗くなり始めていた。なのでがいのだ。しかし、息子夫婦が緒にこうというのを断る理由はない。 「ええ、いいわね。着替えてくるわ」
はる子は部に入り、コートを取りした。のに買った黒いダウンジャケットだった。ポケットがいのが気に入っていた。バッグに財布と携帯話を詰めて部をた。
の運転は嫁のさやかがした。助席には健、部座席にははる子が乗った。が発すると、窓のにボタンがり始めた。いの結晶が灯のにキラキラと輝きながら落ちてくる。 「今初ですね」 さやかが窓のを見ながら言った。その声は弾んでいるようでありながら、どこか緊張しているようにもじられた。
はる子は特に何も考えず頷いた。
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は慣れた並みを抜け、次第に郊へと向かっていった。はる子は最初気にしていなかった。ドライブというなら町をれるのは当然だとったのだ。
しかし、15分、20分と過ぎてもはり続けた。灯もだんだんとなくなり、周りは暗くなっていきた。 「健、私たちはどこへくの?」 はる子が恐る恐る尋ねた。健はバックミラーで母をちらりと見て答えた。 「いいところですよ。もうすぐ着きますから」
い返事だった。それ以質問しにくい雰囲気だった。さやかはだけを見ている。はる子は胸の片隅が息苦しくなるのをじた。何かがおかしい。
が止まったのは、里れた建物のだった。4階建ての建物で、入に板が見えた。——「希望の介護ホーム」。 はる子の臓がドクンと落ちた。介護ホーム。なぜ介護ホームに来たのだろう?
健がのドアをけながら言った。 「お母さん、りてください」 「どうしてここに来たの?」 はる子の声が震えた。さやかがろのドアをけ、はる子のを握った。そのはたかった。 「お母さん、とりあえずに入って話しましょう。は寒いですから」
はる子は仕方なくからりた。に力が入らない。玄関のドアをけてに入ると、温かい空気と共に消毒液の匂いがをついた。
受付に座っていた職員が顔をげた。
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50代くらいに見える女性だった。 「はる子様でいらっしゃいますね」 職員が微笑みながら尋ねた。はる子は答えられなかった。どうして自分の名をっているのだろう?
さやかが歩にました。 「はい、そうです」 さやかはバッグから透のファイルを取りした。類が何枚か入っている。それを職員に渡しながら言った。 「事ににお話していたものです」
職員は類を広げた。はる子は其の景を隣で呆然と見つめていた。何が起こっているのか理解できなかった。 「保護者の方の署名欄が空欄ですね。こちらにサインをお願いします」 職員がペンを差しした。健がそれを受け取った。がかすかに震えているのが見えた。しばらく躊躇していましたが、すぐに名をき殴った。
「お母様は本から保護という形でご入所されます」 職員の言葉がはる子のにはっきりと聞こえた。入所——。 はる子は唇を震わせながら健を見た。 「健、これは体……お母さん!」
さやかが子の腕を掴んだ。笑ってはいましたが、目は笑っていませんでした。 「検査の結果がたら、すぐににお連れしますから。数だけここで休んでいてください」 検査の結果とは、何の検査のことを言っているのだろう? はる子は抗議しようとしましたが、声がませんでした。
職員が2づいてきて荷物を運び始めた。からろしたスーツケースだった。はる子はそこで初めて気づいた。