"「クソ臭い農家」と再開発地8割の地主" 第18話
静けさが戻ったので、私はくく、肺杯に空気を吸い込んだ。
そこには、排気の匂いに混じって、どこからか懐かしいのりが漂っていた。
私は空を見げ、1でつぶやいた。
「お父さん、約束は果たしたよ」
父の沈黙が、彼らへの最の罰となった。
そして私の反撃は、彼らから全てを奪うだけではなかった。
彼らが最も見していた価値観のに、彼らを永に閉じ込めること。
それこそが、父と私が考えた究極のスカッと劇だったのだ。
私はを閉め、鍵をしっかりとかけた。
もうこのが、傲な者たちの笑いで満たされることはない。
からは、真面目にと向きう若者たちの希望に満ちた声が響くことだろう。
私はに乗り込み、父が待つ懐かしい農へとハンドルを切った。
夕に照らされたは、どこまでも真っ直ぐに、清々しく続いていた。
季節は巡り、佐藤農園には再び黄のが訪れた。
見渡す限りの田んぼが、の柔らかな差しを浴びてキラキラと輝いている。
私は今、都会の喧騒とたいコンクリートの壁をれ、このするで父と共に毎を懸命にきている。
にまみれ、汗を流して働く毎は、かつての私が像していたよりも、ずっと清々しく、満たされるものだった。
父が畔で腰をろした。
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「、し休憩にしよう。無理をするとが持たないぞ」
父が筒のたいお茶を差ししてくれた。
私はお茶を受け取り、横に座る。
父のは相変わらずきく節くれっていて、爪のには決して落ちることのないの匂いが染み付いている。
かつて健さんたちがクソ潔だと激しく罵った、あの父の。
今の私には、このが世界で1番誇らしく、何よりも気くて美しいものに見えるのだ。
私はずっと胸の奥にしまい込んでいた疑問を、静かに投げかけた。
「お父さん、あのどうしてあんなにひどいことを言われても、黙っていたの?」
父はく、青くれ渡った並みを見つめる。
穏やかな、それでいてどこか悟ったような微笑を浮かべた。
「。を耕し、命を育てるは、待つことをっているんだよ」
父は言葉を紡ぐ。
「作物は、が鳴りつけたからといってく育つわけではない。のも同じだ」
父は静かに語る。
「彼らが自ら気づき、変わるのを待つしかなかったんだ」
父は度言葉を切り、私の方を向いて力く頷いた。
「でもね。彼らはおを傷つけ、そのまでを塗ろうとした」
父の目にいが宿る。
「おの誠実さを利用し、踏みにじろうとした。それだけは佐藤のトップとして、そして1の父親として、絶対に許せなかったんだよ」
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父の言葉に、私はの奥がツンとくなるのをじた。
父は自分の名誉を守るためではなく、ただ私という1の娘を守るために、あの巨な力と権力をかしたのだ。
私はふと漏らす。
「あのたち、今はどうしているのかしら?」
私の言葉に、父は通の報告を私に見せた。
それは、くれた奥にある、更支援を兼ねた共同農から届いたものであった。
「正尾さんと健さんは今、そこで作業員として厳しい農作業に従事しています」
私は報告を読みげる。
「毎のから畑にて、いクワを振るい、にまみれて腰を曲げ、と向きう々を送っているそうです」
あんなに嫌っていた。
あんなに蔑んでいた臭い仕事。
しかし、そこでの真摯な労働こそが、虚飾で塗り固められた彼らに残された、唯の再のだった。
報告には、健さんが初めて自分で育てた根を収穫した際のエピソードが記されている。
『そのさとみに驚き、涙を流してべた』という節があった。
私は報告を閉じる。
「いつか彼らも、本当の価値に気づくが来るかもしれないわね」
父は頷く。
「ああ。空腹に耐え、自分ので命を作ってべる。そこに嘘はないからな」
私たちは、収穫したばかりの真っ赤なリンゴを丸かじりした。
みずみずしい果汁がいっぱいに広がり、の命力が細胞1つ1つに染み渡るような覚に包まれる。
都会の級レストランでべていたどんな贅沢な料理よりも、今の私にはこのリンゴが最のご馳だった。