"「2度と戻るな」姑と500万円の偽造委任状" 第20話
子の笑顔が、ピクリと止まった。
弘は淡々と事実だけを告げた。
「ええ。定期預は全て俺の別の座に移しました。母さんには1円も渡しません」
子は信じられないものを見るように、弘と義母の顔を交互に見比べた。
子は声を荒げた。
「ちょっとお姉ちゃん、どういうことよ!500万円あるから私と緒にもうって誘ったんじゃないの?」
義母は顔を両で覆い、ガタガタと震えるだけだった。
弘は容赦なく言葉を続けた。
「それに俺も今、このをます。自分のアパートを借りました」
弘は子を真っ直ぐに見た。
「だから叔母さんがこのにむなら、母さんと2で活費をしって暮らしてください。もちろんリフォーム代も、自分たちのおで払ってくださいね」
その言葉を聞いた瞬、子の顔から先ほどまでのるい表が完全に消え失せた。
代わりに現れたのは、計算く残酷な本性だった。
子はテーブルのに広げたパンフレットを、さっと元に引き寄せた。
子の声は、気に数トーンくなった。
「冗談じゃないわよ」
子は部のをぐるりと見渡した。
「お姉ちゃんのだけで、どうやって暮らしていくのよ。私だって自分の貯を取り崩してまで、こんな古いにみたくないわ」
ゴミの臭い。積みげられた器。
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散らかった洗濯物。
事の切を嫁に任せきりだった姉が、たった1週で作りげたゴミ敷の惨状。
子は吐き捨てるように言った。
「それに、お姉ちゃん腰が痛いって寝てばかりじゃない。私にこのの掃除と介護を全部押し付ける気だったの」
子はバッグを肩にかけ直した。
「おもない、事もできないなら、緒にむ話はなかったことにしてちょうだい」
義母が弾かれたように顔をげた。
義母はをうようにして、子の元にすがりつこうとした。
「は、子!待って。あなたまで私を捨てるの?」
しかし子は汚いものでも見るように歩ずさりし、義母のを避けた。
子は笑した。
「当たりじゃない。私には私の活があるのよ。弓さんを追いすからこんなことになるのよ。自業自得ね」
子はそう言い残すと、振り返ることもなくリビングをていった。
コツカツというヒールの音が、たく響いてざかっていく。
そしてバタンと玄関のドアが閉まる音が、のに響き渡った。
リビングにはい沈黙が落ちた。
義母はに突っ伏したまま、声をげて泣き崩れた。
息子にも見捨てられ、最の頼みだった妹にも裏切られ、完全に1ぼっちになったのだ。
8私をこので苦しめ続けた義母の、あまりにも惨めな結末だった。
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私はその姿を見ても、同する気持ちにはなれなかった。
ただ、これで本当に全てが終わったのだという静かな堵だけが胸に広がっていた。
弘が私にく声をかけた。
「こう、弓」
私たちは泣き叫ぶ義母を振り返ることなく、リビングをにした。
もう2度とこの部に入ることはない。
玄関をて、の空気をく吸い込んだ。
のが照った頬をましてくれる。
弘は自分ののトランクを閉め、鍵をかけた。
これで弘の荷物も全て運びされた。
私は自分ののまで歩き、弘に向かって静かにをげた。
「今はち会ってくれて、ありがとうございました」
事務な挨拶だった。
これからはお互い別の所で、別のを歩んでいく。
そのための最の区切りの言葉のつもりだった。
私がのドアをけようとした、弘が私を引き止めた。
「弓、待ってくれ」
弘の顔は、とても真剣だった。
私に復縁を迫るような、甘えた表ではない。
弘は自分のスーツの内ポケットから何かを取りした。
それはし古びた茶い封筒だった。
宛名の部分には、かすれたペンで私の名がかれている。
「弓さんへ」
その文字を見た瞬、私の臓がさくねた。
私が尋ねた。
「これ、どうしたの?」
弘は封筒を両で丁寧に持ち、私に差しした。
弘は静かに言った。
「俺の荷物をまとめているに、親父の古い机の引きしの奥から見つけたんだ。親父がくなる直にいて、ずっとしまってあったものらしい」