"AIを信じて15億円を飛ばした男" 第10話
そのAIなら……」
「そのAIの技術を見せてください」
技術者の声は穏やかだったが、異を唱えさせない響きがあった。
森田は慌ててオフィスに戻り、AIメーカーから受け取っていたカタログを持ってきた。分いカタログの表には「次世代AI精密加システム」ときくかれていた。森田はそれを得げに差しした。
「こちらです。業界最先端のAI制御システムです。営業担当からは『どんな精度でもせる』と太鼓判を押されています」
黒沢さんはカタログを受け取りページをめくった。仕様のセクションをき、スペック表を指でたどる。技術者の目が1点で止まった。
「、このカタログの仕様をお読みになりましたか?」
「もちろん目は通しています。最先端のAI技術で、従来の械では能だった精度を実現すると……この仕様の23ページ、加精度欄をご覧ください」
森田がカタログを覗き込んだ。技術者が指差した箇所には、さな文字でこうかれていた。
「加精度:±0.003mm(最良条件)」
技術者が淡々と読みげた。
「このAIシステムのカタログスペックの精度は0.003mmです。しかも最良条件という注記があります。実際の運用環境では、温度変化や素材のばらつきによってこれよりさらに精度は落ちるでしょう。0.001mmには到底及びません」
森田の顔から血の毛が引いた。
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「そんなはずは……営業担当は確かに『どんな精度でもせる』と言っていたんです。何度も打ちわせをして0.001mmが必だと伝えてあります。先方は『任せてください』と……」
技術者は森田の言葉を遮り切った。
「営業トークを鵜呑みにされましたか? その言が会議の空気を凍りつかせた。森田はをいたまま何も言えなくなったという。技術者は続けた。
「AIメーカーの営業担当は、契約を取るために最良の条件を提示するのが仕事です。『どんな精度でもせる』という言葉を真に受ける方がいるとはいませんでした。カタログの仕様を読めば0.003mmが限界であることは目瞭然です。これは業界の常識です」
別の技術者が補した。
「補させてください。そもそもAIに学習させるためには教師データが必です。0.001mmの精度データを量に取得し、それをAIに学習させなければならない。そのデータを作れるのは川さんだけだった。川さんがいなくなった点で、AIに学習させるデータ自体がしないんです。仮に世界最のAIを持ってきても、教えるべき技術が消えてしまった以、何のもありません」
3目の技術者もをいた。
「加えて言えば、川さんの技術の本質は数値化できない領域にあります。切削音の微妙な変化を聞き分けて送り速度を調する。
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の震えを逆に利用して微細な振を与える。これらは全て川さんの体に染み込んだ覚であって、センサーで測定できるものではありません。データが取れないものは、AIには学習させられません」
森田がいがった。
「しかしAIの技術は歩です。今は0.003mmでも、すぐに0.001mmに届くはずです。技術の歩を信じないのはろ向きな考え方ではないですか? 皆さんは技術者なのに、なぜAIの能性を否定するんですか?」
最初の技術者がかぶりを振った。
「、々はAIの能性を否定しているのではありません。現の技術の限界を正確に把握しているだけです。川さんの技術は45の経験で培われた体です。属の切削音を聞き分け、の震えを刃に乗せて微細な切削をう。それは言語化もデータ化もできない、の体に刻まれた識です。それをコンピューターに置き換えることは現の技術では能です。10も20もおそらく能でしょう。あの技術は川さんというそのものなんです」
黒沢さんがここで初めてをいた。
「森田。々は川さんの技術を信頼して15契約を続けてきました。15億の取引です。その判断を支えてきたのは、川さんのからまれる部品の品質でした。あの精度をせるのは本探しても川さんしかいない。
それを々はよくっています。そして今、その川さんを失った丸精に、々が求める品質を維持する能力があるのかどうか、今の検査で確認させていただきました」