"診察室に入れなかった私" 第3話
「つまり、あなたは今まで、ご自に妊娠糖尿病のリスクや産の兆候があることを、切らされていなかったということですね?」
「はい……健は、毎回『何も問題ない、順調だ』って……先がそう仰っていたと……」
「そんな馬鹿な……」
神医師が、額を押さえてく呻きました。
「じゃあ、あの同は……? 侵入検査の同や、投薬拒否に関する確認にかれていた『佐藤千』という署名は……」
「私、病院の類に名をいたことなんて、妊娠届をした最初の以、度もありません!」
診察が、凍りついたような沈黙に包まれました。 護師さんが持ってきたコップのを含むと、喉の奥が引きつるようにたくなりました。
医師はキーボードを叩き、過の類スキャンデータを画面に呼びしました。 そこに映しされた枚の『治療・検査辞退申』。 患者氏名の欄には、確かに私の名がかれていました。
けれど、その跡を見た瞬、私の指先はガタガタと震え始めました。
私の文字ではありません。 見すると丸みを帯びた女性らしい字に見えますが、「佐」の払いの鋭さ、「」の最の払いが内側に巻き込む独特の癖。 それは、婚姻届をく、賃貸契約を結ぶ、毎の賀状で嫌というほど見てきた、夫・健の跡そのものでした。
健が、私の名を偽造して、治療を拒絶していた。
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なぜ? どうしてそんなことを? 健は、お腹の赤ちゃんを殺そうとしているの? 私を病気にさせようとしているの?
黒い妄がのを駆け巡り、吐き気が込みげてきました。 サスペンスドラマのように、夫が額の命保険をかけていて、私や子どもをき者にしようとしているのではないかという恐ろしい考えが、瞬だけ脳裏をかすめました。
けれど、すぐにその考えは否定されました。 健が私の妊娠をった、あの男は病院のロビーで目も憚らず号泣したのです。 『ありがとう、千。俺、絶対にいい父親になるから。を守るから』 あの涙が、あの震える腕の温もりが、嘘だったとはどうしてもえませんでした。 それに、私たちは互いに命保険の受取をそれぞれの母親にしたまま、結婚も変更していません。私がんでも、健には円の得にもならないのです。
殺じゃない。 保険でもない。
なら、体何のために? 健はなぜ、私を「治療を拒む愚かな母親」に仕てげてまで、医療をざけようとしたのか。
「佐藤さん」
神医師の静かな声が、私の乱れた考を引き戻しました。
「今、ご主がいらっしゃらなくて本当に良かった。もし今も彼がで診察に入っていたら、取り返しのつかない事態になっていたかもしれません」
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医師はカルテを操作しながら、極めて厳しい調で続けました。
「赤ちゃんの推定体は千百グラム。週数に対してややさめですが、幸いにも現点で緊急の胎児能全は見られません。ですが、胎盤の血流抵抗はらかにくなっています。このまま放置すれば、ある突然、赤ちゃんに酸素が届かなくなる危険があります」
「そんな……っ」
「すぐにでも処置が必です。今、これから血液検査の再測定と、NST(ノンストレステスト)をいます。そして、子宮収縮を抑える張り止めの内を始してください。来週の健診で数値が改善していなければ、即座に入院していただきます。よろしいですね?」
「はい……! 何でもします。赤ちゃんが無事なら、どんな治療でも受けます!」
私は縋り付くように頷きました。 神医師はく息を吐き、それからし躊躇するように私を見つめました。
「……カルテの示請求をなさいますか?」
「え?」
「過回分の診察記録、およびご主が偽造されたとわれる同のコピーです。ご庭の事に医療者が踏み込むことは本来できませんが……これはな印私文偽造であり、何より母子の命に対するな背信為です。必であれば、私の署名捺印入りの診療経過報告も作成します」
神医師の目は、真剣そのものでした。
先ほどまでの淡さが嘘のように、そこには患者を守ろうとするい志が宿っていました。