"診察室に入れなかった私" 第4話
「……お願いします」
私は乾いた唇をいて、はっきりと答えました。
「今のカルテと、あの枚の類のコピーをください。それから、今の私の治療に関する連絡は、緊急連絡先も含めて、すべて夫ではなく私の個の携帯話に直接かけていただくよう、カルテの登録を変更してください」
「わかりました。すぐに続きします」
、私は追加の採血とのNST検査を終え、張り止めの薬が入った薬袋を抱えて病院の自ドアをました。 渡されたA4の封筒のには、健が私の名を騙ってき殴った、おぞましい拒絶の記録がたく収まっています。
は、たいが吹き抜けていました。 夕暮れのを歩きながら、私はコートのからそっとお腹を撫でました。 ポコン、と、のを押しげるようなさな胎をじました。
丈夫。ママが絶対に守るから。 誰にも、あなたを危険に晒させたりしない。
けれど、胸の奥底に渦巻くたいりと疑は、のたさよりも遥かにく私のを凍りつかせていました。
健は何を考えているのか。 あの、誰に対しても腰がく、争い事を極端に嫌い、私に痛いいや辛いいをさせまいと先回りばかりしてきた優しい夫。
『千は座ってて』 『千は気にしなくていいよ』 『俺が全部やっておくから』
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結婚してからの、健が癖のように繰り返してきたその言葉の数々が、全く別のを帯びて私のので霊しました。
あれは、本当に「優しさ」だったのか? 私は彼に切にされていたのではなく、ただ単に、自分のの決定権をつずつ奪われていただけなのではないか?
駅までのを歩きながら、私はスマートフォンの画面を見つめました。 健から、メッセージが入っていました。
『仕事、なんとか目処がついたよ! で診察丈夫だった? 寒かっただろ。今から急いで帰るね。今夜は千のために、コトコト煮込んだ参鶏湯のチキンスープ作って待ってるからね』
らしいクマのスタンプが添えられたその文面を見て、私はわず唇を噛み締めました。 文字の端々から滲みる、完璧な「良き夫」のオーラ。 この男は、今自分が病院に来られなかったことで、あの精巧な嘘が暴かれたなどとはにもっていないのです。
私は呼吸をつし、震える指先で返信を打ちました。
『ありがとう。無事に終わったよ。今からに乗るね』
送信ボタンを押し、スマートフォンをコートのポケットにねじ込みました。 ポケットので、私はもうつのアプリをちげました。 音声録音アプリ。 画面の央にある赤い丸いボタンを、そっと確認します。
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に揺られ、最寄り駅に着く頃には、空はすっかり夜のに沈んでいました。 駅から自宅までのいつもの宅。 灯のが、居としてで選んだ築浅のマンションを照らしています。 階の角部、リビングの窓から漏れる温かなオレンジのかり。 いつもなら、あのかりを見るだけで「私の帰る所がある」とが温かくなったはずでした。 けれど今は、あの温もりのにどんな歪んだ毒が潜んでいるのかとうと、が竦みそうになりました。
エレベーターをがり、玄関のドアノブにをかけます。 鍵をけてドアを引くと、ふわっと、姜と鶏肉の汁の効いた、たまらなく美しそうなりが廊に漂ってきました。
「おかえり、千!」
パタパタと音をてて、リビングから健がりで迎えてくれました。 グレーのリネン製のエプロンをにつけ、には鍋つかみを持っています。 額にはし汗を浮かべ、私を見る目はどこまでも優しく、慈に満ちていました。
「寒かっただろ? ほら、袋脱いで。お腹、張ったりしてない? で本当によく頑張ったね、偉かったよ」
健はそう言って、私のえ切った両を自分の温かいのひらで包み込み、ふうふうと息を吹きかけて温めてくれました。 その仕には、微の邪悪さも、悪もじられません。
いつもの、私の好きな、優しい健そのものでした。
私はその温もりをじながら、胸が張り裂けそうな痛みを覚えました。