"診察室に入れなかった私" 第12話
その姿は、見すると妻と子を狂おしいほどにする、のい夫に見えるかもしれません。 義母もまた、涙ぐみながら健の肩を抱き寄せました。
「ほら、見てごらんなさい! ここまで夫にされている妻が、本のどこにいるっていうの!? 千さん、あなたがを通せば、健のが壊れてしまうわ! ここは妻であるあなたが折れなさい!」
が織りなす、完璧な「族の」という名のグロテスクな茶番劇。 罪悪で私を縛り付け、正常な判断力を奪い、すべてを健の都の良い檻のに閉じ込めようとする、窒息しそうなほどの共犯関係。
私は、膝に縋り付く夫のを、そして勝ち誇ったように私を見ろす義母の顔を、ただ氷のようにえ切った目で見ろしていました。
「……ねえ、健」
私の静かな声が、健の泣き声を切り裂きました。
「何……? 分かってくれたのか、千……?」
健が、縋るような希望を瞳に浮かべて顔をげました。
「あなた、昨の夜、誰と話していたの?」
ピク、と、健の全が張りました。 義母の顔からも、瞬にして表が消え失せました。
「え……?」
「昨の夜過ぎ。あなたが寝で、ドアをしけたまま、お義母さんと話していた会話。私、全部聞いていたわ」
リビングの空気が、まるで真空状態になったかのように凍りつきました。 健の瞳孔が、恐怖のあまり限界まで見かれます。
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「ち、千、それは……」
「『親父のと同じだ』って、言っていたわね」
私は歩も引かず、健の目を射抜くように見つめました。
「『親父の術の同にサインしたのは母さんだった』『母さんが決めたから親父はんだ』……そして、『俺は絶対にサインなんかしない』って」
義母が息を呑み、胸元を押さえました。 古い傷に、粗塩を擦り込まれたような顔でした。
「や、やめろ……千、やめてくれ……!」
健が両を塞ぎ、首を激しく横に振りました。 けれど、私は止まりませんでした。 この男が積みげてきた、おぞましい逃避のを、今こので完全に瓦解させなければならなかったからです。
「『俺が治療しろって言って、それでダメだった、誰が責任を取るんだ』『俺のせいになるじゃないか』……そう言っていたわね、健」
私の声は、震えていませんでした。 りすら超えた、絶対な軽蔑が、言葉のつつにく宿っていました。
「だから私の名を騙ったのね。私に『治療はいらない』と言わせたことにしておけば、万が赤ちゃんに何かあっても、全部『妻の愚かなが儘のせい』にできるから。自分は必に妻を説得したけれど聞き入れられなかった、な被害者の夫でいられるから!」
「違うッ!!」
健が絶叫しました。 彼はちがり、狂ったように髪を掻きむしりました。
「違う、俺は……俺はただ、誰も傷つかない方法を選んだだけだ! 俺がサインさえしなければ、俺が決めさえしなければ、誰も俺を責められないじゃないか! 親父がんだ、親戚が母さんを責めたんだぞ! 『おが医者のに乗って術に同したからだ』って! あんな獄、俺はもう度と御免なんだよ!」
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健のからびしたのは、紛れもない、彼自の赤裸々なエゴでした。
赤ちゃんのためでも、千のためでもない。 ただ自分が「責められたくない」という、極限の自己保。
「健、もういいのよ! もう言わなくていいの!」
義母が取り乱して健を抱きしめようとしましたが、健はそれすらも振り払いました。 完全にパニックに陥った夫は、リビングのサイドボードに突すると、私のマタニティバッグを乱暴に掴み取りました。
「入院なんかさせない! 病院なんかかせないぞ!」
健はバッグの底から、私の財布と保険証入れを引に引きずりしました。
「これは俺が預かる! 保険証も母子帳も、全部俺が管理する! 千が静になって、『治療なんていりません』って先に謝るまで、歩もにさないからな!」
「健、返しなさい!」
私がを伸ばした瞬でした。 健が私の腕を乱暴に振り払いました。
バチン、と鈍い音がして、私の体がバランスを崩しました。 倒れまいと踏ん張った瞬、腹部の奥くで、何かがパツンと弾けるような、異様な触がりました。