借地で古い銭湯「楓湯」を営む35歳の宮下は、ある冬の夜、閉店間際にわずかな小銭を握りしめた身寄りのない7歳の少女・小春と出会う。入浴料にも満たない額だったが、宮下は「今日は試し湯の日だ」と嘘をつき、タダで風呂へ通わせ始めた。 毎晩のようにボロボロの服でやってきては「ずっとここにいたい」と呟く小春。やがて、彼女の母親・さ苗が腰の痛みを抱え、ガスも止められた極限の生活を送っていることが発覚する。宮下は不器用ながらも2人を支えようとするが、そこへ「金目当て」という悪質な噂や、さ苗を連れ戻そうとする冷酷な親族の影が忍び寄る。 温かいお湯の裏で隠されていた過去の秘密と、家族の絆を賭けた選択の行方とは——。